広報さがみはら No.1280 平成26年(2014年)1月1日号 4.5面 ---------- 新春TALK 未来に向かって進むさがみはらのまちづくり、若者たちの思いは今… 未来に向かって  昨年、「bono相模大野」「ペアナードオダサガ」という新たなにぎわいの拠点が相次いで誕生し、さらに活気あふれるまちへと進化を遂げた相模原。さがみ縦貫道路(圏央道)やリニア中央新幹線などを生かした利便性に富んだ未来志向のまちづくりも進んでいます。今回は年頭を飾って、それぞれの思いからさまざまな形でまちづくりに参加する若者に集まっていただき、加山市長と熱く語り合ってもらいました。 出席 小野華澄さん(相模女子大学人間社会学部社会マネジメント学科3年)/小島慎伍さん(麻布大学生命・環境科学部環境科学科4年)/守屋有悟さん(青山学院大学法学部法学科3年)/渡部綾乃さん(相模女子大学学芸学部英語文化コミュニケーション学科2年/加山俊夫 市長 《司会》tvkアナウンサー 翁長(おきなが) 舞さん 加山 俊夫相模原市長 南区の若者のまちづくり参加≠フ調査活動に参加 小野 華澄さん 「あざおね社中」で青根の里山コミュニティ活動に参加 小島 慎伍さん 大学生防犯ボランティア「グリーンシーガル」副支部長 守屋 有悟さん 復興支援学生ボランティア委員会委員長 渡部 綾乃さん にぎわいと豊かな自然のまちづくり    新年明けましておめでとうございます。昨年は相模原の未来へ向けたまちづくりに、大きな動きがありましたね。 加山 「bono相模大野」「ペアナードオダサガ」がオープンし、新たな交流とにぎわいの拠点が誕生しました。また、圏央道相模原愛川インターチェンジの開設や、リニア中央新幹線の神奈川県駅が橋本駅付近に設置されることが明らかになるなど、うれしいことが多い年でした。   今回は、さまざまな形でまちづくりに参加している大学生の皆さんに集まっていただきました。皆さんはどのような活動をしていますか。 小野 私が所属するゼミでは、若者のまちづくり参加≠テーマに南区で調査活動をしています。区民参加の討論会の企画・運営や、「相模原よさこいRANBU!」の実行委員会にも携わりました。 それらの活動を通して感じたことは、相模原の皆さんは本当にこのまちが好きなんだなということ。これは素敵なことだと思います。まちを良くしたいと思う若者がたくさんいることも知りました。 小島 僕は緑区の青根で里山コミュニティ活動「あざおね社中」に参加しています。青根という自然豊かなフィールドを活用し、休耕田を水田に戻す活動や、生物多様性の調査、環境学習、環境まちづくりなどの活動をしています。 学生を中心とした団体で、地元の方にすればいわば“よそもの”。当初は壁を感じましたが、今ではすっかり打ち解け、家に上がらせてもらって一緒に食事をする間柄にまでなりました。 加山 多くの方々に参加していただくことで、相模原のまちづくりを大変元気付けていただいていると思っています。 本市は今年市制施行60周年を迎えます。市制施行直後の昭和30年から、産業都市をめざし、工場誘致条例を制定するなど、ものづくりを中心とした都市づくりを行ってきました。その後、昭和60年代からは、商業地の整備を進めるため、例えば小野さんが活躍する南区の拠点、相模大野駅周辺も再開発を行い、その結果、市外からも多くの人が買い物に来ていただける、活気のあるまちになったと思います。 一方、本市が誇るものに、豊かな自然があります。特に、津久井地域は神奈川の貴重な水がめです。その水に育まれた森林や田畑をしっかりと守っていくことは、まちづくりの大きな柱の一つです。今、森の荒廃や休耕田の増加が問題になっていますが、その原因の一つは人口減少です。まちづくりの面でもそれをどう食い止めるかが大きな課題となっています。 荒れた農地や森をよみがえらせる活動は自然そのものを守ることにつながります。小島さんのように、多くの方々にこれらの活動に参加していただきたいですね。 暮らしやすさの基本安全・安心   安全・安心なまちづくりのために活動をしている方もいます。 守屋 大学生防犯ボランティア「グリーンシーガル」 で市内を中心に活動しています。安全・安心なまちづくりのために何ができるかを学生の視点で考え、防犯パトロールのほか、イベントなどで小さい子どもを対象に楽しく防犯を学べるクイズや塗り絵を行うなど、さまざまな形での防犯啓発活動を行っています。私は相模原市で育ったので、少しでも自分の住むまちが良くなってほしい、そんな思いで活動しています。 渡部 東日本大震災の被災地で復興支援学生ボランティア活動を行っています。相模原市の友好交流都市、岩手県大船渡市で、主に被災した方の心のケアを目的として活動しています。4回ほど大船渡市を訪問して感じたことは、以前なかったところに橋ができるなど、目に見える部分の復興は確実に進んでいますが、心のケア、内面の復興はまだこれからだということです。また、大船渡市の皆さんは、相模原市をご存知の方が多く、それが驚きであり、うれしくもありました。 加山 守屋さんたちの活動は、本当に頼もしく思います。今、防犯に関する自主的な組織が各地区に誕生しています。大学生やさまざまなボランティアが参加し、地域の安全を地域住民自らが担っていこうという機運が高まってきていますね。住みやすさの基本は安全・安心です。行政がそのシステムをしっかりと確立することはもちろんですが、市民自らが人と人とのつながりの中で安全・安心な環境をつくりだそうという運動が広がっています。 また、「銀河連邦」で結ばれた友好交流都市である大船渡市には、東日本大震災の発生直後から物的支援、職員派遣を継続的に行っています。一番大切なのは、地元の方々に早く元気を取り戻していただくことなので、渡部さんたちの活動はとても心強いですね。 東日本大震災はさまざまな教訓を残しました。本市でも地域防災計画の見直しや、3年間集中して防災・減災対策に取り組む「さがみはら防災・減災プログラム」を策定し、具体的に事業を進めています。また、今回の震災で銀河連邦の市町がいち早く大船渡市への支援を行ったように、日頃からの自治体間連携をしっかり行っていくことの重要性を実感しています。 まちの新たな「核」づくり   相模原市には未来に向けたまちづくりの面からも大きな可能性がありますが、これからのビジョンについて、どのようにお考えですか? 加山 さがみ縦貫道路が開通し、東名高速道路以外にも中央自動車道や関越自動車道につながることにより、広域交通ネットワークが形成され、首都圏各地への交通利便性が格段に向上します。これを生かし、市内の二つのインターチェンジを中心に産業集積などをしっかり行い、都市力の向上や、地域経済の活性化を図ります。また、相模総合補給廠しょうの一部返還予定地を有効活用し、相模原駅周辺の拠点整備や、広域防災拠点としての利用を含めたまちづくりの検討を進めるとともに、小田急多摩線の延伸にも取り組みます。 そして、橋本駅付近にはリニア中央新幹線の駅ができます。南区の相模大野駅周辺、中央区の相模原駅周辺、緑区の橋本駅周辺という三つの拠点を連携させる多極連携型のまちづくり≠推進していきたいと思います。 まちの基盤整備はもちろんですが、一番大切なのは地域に根差した市民サービスの充実です。医療・福祉・介護などを充実させるとともに、災害に強い安全・安心なまちづくりを推進していきたいと考えています。 次代につながるまちづくりを   相模原市にこれからどんなまちになってほしいですか。 小野 若者が思っていることを発言する場がもっと増え、新たな視点からのまちづくりが進んでいくことを期待します。 小島 市民の皆さんにも僕たちのような活動に参加していただきながら、相模原市の価値を市民全体で再発見、再認識し、まちを盛り上げていってほしいと思います。学生だけで限界がある部分は行政にも応援してほしいですね。 守屋 まちの都市化はうれしいことですが、一方で人同士の結びつきが希薄になっている気もします。人と人とのつながりを大事にする、昔ながらの相模原の良さが残るまちになってほしいです。 渡部 私は東日本大震災のときに宮城県で被災しました。ライフラインが止まるなど不便な思いをしたので、もし相模原で被災したらどうなるのだろうという不安もあります。災害に備えたさまざまな情報を、もっと市民の方にお知らせする方法ができたら良いなと思います。 加山 まち≠ヘ次の時代につなげなくてはいけないもの。そのために、魅力的なまちをつくり上げ、育てていかなくてはいけないと思います。それを実行し、支えていくのは若い人たちのパワーではないでしょうか。 今、相模原市は大きく変貌しようとしています。市民全体でまちをパワーアップさせていくことが大切です。特に大学生の皆さんをはじめ、次代を担う若者の、未来に向かって突き進んでいく力に大いに期待しています。 ---------- 若い力で相模原の未来を まちづくりに若者の感性を 南区区民会議委員 荒俣 大(おおき)さん  生活者としてでなく“利用者”の視点で自分のまちを見る…。今、若者と地域はそんな希薄な関係になっている気がします。まちづくりへの若者の参加は、南区の将来にとって不可欠です。それを考えるためには若者自身のアイデアが必要では? ということで小野さんをはじめ相模女子大学の皆さんに協力していただきました。若い世代を対象に行った「無作為抽出討議会」でも企画・運営面などで活躍していただき、斬新な意見がたくさん出ました。地域での“若者不在”を解消する良い循環をつくっていくために、もっともっと多くの若者に、若い感性を発揮してほしいですね。 若者と地域のコラボレーション 青根DEアオーネあそびと学びの会代表 山口増男さん  「あざおね社中」の皆さんと、私たち「青根山王会神輿会」とで「青根DEアオーネあそびと学びの会」をつくって今年で3年目。遊びや、生物との触れ合いなどを通じて、子どもたちに青根の魅力や自然の大切さを知ってもらう活動など、若い力と地域とのコラボレーションによる活動もだいぶ知られてきました。市内には人口減少という大きな問題を抱える地域もありますが、若者参加による活性化を模索する地区が増えてきました。「あざおね社中」がその大きなきっかけをつくったのではないか、と思っています。 まちづくりの中で学んでほしい さがみはら市民交番青パト隊代表 本間俊三さん  JR横浜線町田駅南口にある市民交番「さがみはら安全安心ステーション」を拠点にした地域の防犯活動に、昨年5月から「グリーンシーガル」が参加しています。主に青色防犯パトロール車による巡回など、防犯の啓発活動に若いパワーを発揮しています。お年寄りの仕事というイメージのある防犯活動ですが、若者の参加で地域の関心も高まり、防犯意識の向上にもとても効果的だと思います。まちはさまざまな世代の人が、それぞれの役割を果たすことで成り立っています。防犯に限らず、若者にもっとまちづくりに参加してほしい…。貴重な社会勉強の機会であり、人生の大きな財産にもなるはずですから。 復興に向けて勇気をもらった 岩手県大船渡市 後ノ入(のちのいり)仮設住宅自治会長 只野富雄さん  渡部さんたち学生ボランティアの皆さんは、この仮設住宅を4回ほど訪問してくれています。花を配ったり、炊き出しをしてくれたり…。お茶会での会話はとても楽しみです。元気だった人がちょっとしたことで寝込んでしまうなど、震災のショックがまだ多くの人の心に残る中、若者との触れ合いは、お年寄りをはじめ、私たちの励みになっています。復興に向け、勇気をもらった気がします。この若い力で、相模原の未来を素晴らしいものにしてほしいですね。