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ギャラリースタッフセレクション6 根岸 陽子(ねぎし ようこ)展

この展覧会は、各ギャラリースタッフが注目する若手作家を、毎回厳選し紹介していくシリーズ展です。

平成16年5月17日(月曜日)から7月10日(土曜日)まで

根岸 陽子展

「孤高の空」(出品作品)

「孤高の空」(出品作品) エッチング、2004年

  • エッチング、2004年

プロフィール

根岸 陽子

  • 1976年
    群馬県生まれ
  • 2005年
    女子美術大学大学院 修了

個展

  • 2002年
    ギャラリーUP'S(東京)
  • 2004年
    養清堂画廊(東京)

グループ展等

  • 2000年
    第69回日本版画協会展(以降毎年出品)
  • 2001年
    全国大学版画展 買上げ (東京)
  • 2002年
    第5回高知版画トリエンナーレ (高知)
    第2回山本鼎版画大賞展
  • 2003年
    第71回日本版画協会展 新人賞受賞 (東京)
  • 2004年
    日本版画協会 第71回版画展 受賞作家作品展 (群馬)
    第72回日本版画協会展 準会員賞受賞 (東京)

解説

しとやかなうごき

花坂 陽朗(はなさか たかあき)

作品は、間接法のエッチングを用いた銅版画である。
木版画が凸版なら銅版画は凹、つまり溝にインクをつめて紙と一緒にプレスし制作される。この技法には、直接金属に彫り込む直接法(エングレーヴィング・メゾチント・ドライポイント等)と、酸性の液体によっての腐蝕を利用する間接法(エッチング・アクアチント等)がある。版面に防蝕剤を塗り、先の尖った針のようなニードルによって線を描く。描いた部分だけ銅が露出し、腐蝕液に浸けるとその露出した銅が腐蝕し線状の窪みができる。線の濃さは、この腐蝕時間の違いによって生じる窪みの深さで表現されていく。

今回ギャラリースタッフセレクション6として紹介する根岸陽子は、版画家である。エッチングを用い、細くやわらかな線で、時には激しく、また時にやさしい自然を現象として捉え、その衝動を表現してみせる。低地に這い漂う冷気を帯びた雲でもあり、激しく流れる水、又は強風の中耐え忍ぶ草木の流れや、しっとりと覆いかぶさる残雪にも見て取れるその画面は、そのいずれにしても「自然」というものが引き起こす何ものかの「動き」である。
作品とは、観るものによって様々に変化するものだ。根岸の描きだすこの「動き」ほど、それぞれに変化していくものはないだろう。観るものによって変容する作品の表情。激しくもあれば反対に穏やかな表情さえ見い出す事ができる。
日々変わる我々の情感に寄り添うごとく流れていくモノクロームの世界に、そのやわらかくも細く無数に織りまぜられた直線と曲線は、先の尖ったニードルによって描き出されていることを瞬間的に忘れてしまう程、「淑やか」である。
これらの「しとやか(淑やか)」な「うごき(動き)」として表現される画面に我々は、受け手として根岸の表現のその内面にまで深く入り込む事はできないだろうか。 感情の起伏やその表情は、抑えたとしても少なからず表層に滲み出てくるものだ。とすれば、根岸という人間が描きだす一連の画面には、彼女独自のタッチがなされるほど、その一点一点につけられたタイトルと画面を流れるように描かれた現象の動きを淑やかに描ききることができる強さと弱さを持ちながら、それをやわらかく包み込む穏やかな「根岸陽子」という人間の、性格の一面をそれぞれに探ることができよう。
人間がモノをつくる以上それには「想い」や「願い」といった心情が少なからず入り込む。なぜならモノをつくる人間のモノに対する愛情は我々が子を生み、育てる事と少しも変わる事はないからだ。これらつくられたモノたちは、皆つくりあげたものの情感や心情といったものを遺伝として内包し我々の前に存在する。八百万神(やおよろず)の魂のような表現でこういった事を片付けたくはないが、この紙にプレスされた根岸の表現を感じとる事が出来たとするなら、これらは既にただの紙ではない。根岸の情感や心情が遺伝された紙つまり、疑いようのない「根岸陽子の作品」そのものなのである。

相模原市民ギャラリー 美術専門員

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