ギャラリースタッフセレクション8 「mayu展」 大沼 真由子(「まゆてん」おおぬま まゆこ)
ギャラリースタッフセレクションはギャラリースタッフが、注目する若手作家を毎回厳選し紹介していくシリーズ展です。
平成17年3月10日(木曜日)から4月26日(火曜日)まで、午前9時から午後5時まで 水曜日休館
出品作品
「2525(ニコニコ)記念日」
- 2002年
「2525(ニコニコ)記念日」
- 2002年(部分)
プロフィール
- 1976年
山形県生まれ - 2005年
女子美術大学大学院 修了
個展
- 2002年
3月 「mayu展」(あかね画廊)
6月 「mayu展」(cafe see more glass) - 2004年
10月 「mayu展」(あかね画廊)
11月 「口火」switch point(国分寺)
グループ展等
- 2000年
10月 「雑物展」(あかね画廊) - 2001年
11月 「JAM展 8th」(アートスペース リビーナ) - 2002年
10月 「515+α=7」(ギャラリー神宮苑)
12月 「JAM展 9th」(アートスペース リビーナ)
12月 「柔らかな月たちの囁き展」(美薔樹) - 2003年
11月 「JAM展 10th」(アートスペース リビーナ)
12月 「女子美術大学大学院洋画展」(ギャラリー青羅) - 2004年
2月 二人展「1week」(exhibit LIVE)
8月 企画展「空のリレー展」(相模原市民ギャラリー)
9月 三人展「栞展」(マキイマサルファインアーツ)
11月 「JAM展 11th」(アートスペース リビーナ)
12月 「アートロック」(川崎クラブチッタ) - 2005年
2月 「Exhibition M2」(ギャラリー青羅)
3月 企画展「A (art) ランチ」(AXIS GALLERY ANNEX)
受賞等
- 2001年
山形県展 入選 - 2002年
神奈川県展 入選 - 2004年
ターナーACRYL AWARD 審査員賞
トーキョーワンダーウォール公募展 入選 - 2005年
3月 平成16年度大学院修了制作作品展 大久保 婦久子賞・美術館収蔵作品賞(女子美アートミュージアム)
解説
大沼真由子の「かわいい」作品
柳川 雅史(やながわ まさふみ)
「かわいい」という言葉は、基本的には自分よりも弱く未熟な立場のものに対して発せられることが多い。すなわち、幼児であるとか小動物であるとか、さらにはそれらを連想させる言動や行動などに対してである。そこには無意識とはいえ、発する側の保護者的優越性が存在するという。
さて、大沼真由子について、筆者はある女子高生から「すんごくかわいい作品」の作者、というような紹介をされたことがある。初見した作品は、カラフルな小記号が画面一杯に溢れ、ルイ・ヴィトンのデザインを彷彿させるような「かわいい」絵画であった。そして、作家本人も、期待に反せずかわいらしい美大学院生であった。しかし、彼女の描く作品には、単純に「かわいい」だけでは済まされない何かが感じられた。
実は、彼女の作品にはある秘密が隠されている。カラフルに描かれたこれらの小記号は、彼女が創作した彼女にしか解読できない文字「mayu語」、なのだそうだ。彼女はこの「mayu語」を使い、日常的な実にプライベートなことを画面一杯に書き記し、それを作品として発表する。つまり、我々は作家本人の日記を堂々と見ていることになるのだが、悲しいかな、それを読み解くことはできず、作品全体から漂う印象を語り合うことしかできない。それが女子高生のいうような、「かわいい」の一言に集約されるのである。
ここに作家の二面性が存在する。プライベートな事柄を露出したいという自分と、隠蔽しておきたいという自分。そしてそれを理解してほしいという自分と、理解できるはずがないという自分。それが「mayu語」という文字(二者以上の間で共有できないため、正確には文字の性格を有していないが)を使った絵画表現になるのである。さらにいえば、「かわいい」という評価に対して、それを受け入れる自分と、それに反発する自分とがあるに違いない。それは作家としてというよりも、むしろ子供から大人へと移り変わる過渡期の人間の本質として、誰でも持ち得る感情であろう。大沼真由子の作品は、このように常に自分の中の相反する感情が、対立しながら創作されつづけているのである。
ところで、ここで大沼作品について穿った見方をしてみよう。例えば、先に挙げたルイ・ヴィトンとのコラボレーションで話題となり、ニューヨークでは、その作品に6,000万円もの高値がついたという村上隆という作家がいる。村上氏は、新アート時代の寵児として、世界を相手にいま最も活躍している作家の1人であるが、その作品はいわゆる「オタク」と呼ばれる人々がつくる、愛くるしい少女フィギュアと一見見分けがつかない。しかし、その作品制作の裏側には、日本独特のオタク文化を背景とする高度で緻密な計算が働いている。同様に、我々が大沼作品を「かわいい」と見ること自体、すでに彼女は計算済みなのかも知れない。無意識とはいえ、保護者的感覚から「かわいい」と発してしまう我々は、良い意味で彼女の策略に嵌まってしまっていることになる。
「mayu語」というプライベートを巧みに使い、「かわいい」イメージを浸透させつつも、作品制作の裏にある微妙な心理描写を窺い知ることのできる作家大沼真由子。彼女を紹介してくれた女子高生のように、「mayu語」の世界に胸躍らす人々が続出する可能性も高い。
かわいさだけの作家だと甘く見てはならない。彼女には作家として必要不可欠なしたたかさが秘められている。
相模原市民ギャラリー学芸員
※上記リンクは「Weblio辞書」のページを新しいウィンドウで開きます。
用語解説については、「Weblio」までお問い合わせください。