ギャラリースタッフセレクション9 長野 けんじ展 genki&smile
ギャラリースタッフセレクションはギャラリースタッフが、注目する若手作家を毎回厳選し紹介していくシリーズ展です。
平成17年4月28日(木曜日)から6月21日(火曜日)まで、午前9時から午後5時まで 水曜日休館
展示内容
父の仕事の関係から幼い時に中東で育ち、戦火にも遭遇した経験をもつ長野けんじ。そのためか中東やアジアに非常に親しみを感じ、時折、ギターを片手にあてのない旅を続けるという。その長野氏は、行く先々で現地の子どもたちとふれあい、その笑顔を写真におさめている。
長野氏の作品は、子供たちの写真の一枚一枚に思い出やメッセージをポエム風に添えたものである。写し出された子どもたちは、誰もが屈託のない笑顔にあふれ、見るものに自然な感動を与える。技術に頼らない素朴な味が、彼の作品の最大の魅力といえよう。
本展示は、写真というよりもむしろ詩人とでもいうべき要素の高い自由な表現者・長野けんじと、アジアの子どもたちとのふれあいの記録を紹介するものである。
プロフィール
- 1966年
長崎県に生まれる。 - 1971年
シリアのアメリカンスクールで3年間を過ごすが、第4次中東戦争に遭遇し、レバノンに避難する。 - 1974年
帰国。その後父の仕事の関係上、日本各地を転々とする。 - 1980年
インドネシアのスマトラ島メダンで1年間を過ごす。 - 1987年
東京都八王子に転居。 - 1997年
3か月かけてインドを1周をする。 - 1998年
ネパールを旅する。 - 2002年
「smile」展(相模原市民ギャラリー)
幼年期を過ごしたシリアを旅する。 - 2003年
「genki」展(相模原市民ギャラリー)
一連の写真作品が新風社主催の第20回記念コンテスト最終選考に至る。 - 2004年
ラオスを旅する。
「オールドダマスカスの人々」展(相模原市民ギャラリー)
解説
柳川 雅史(やながわ まさふみ)
強い日ざしの中、その青年はギターを片手にフラリと町にやってきた。
やがて木陰を見つけると、おもむろにその根に座り、静かに弦を爪弾いた。
その様子を遠巻きにみている子どもたちがいる。
やがて、1人がはにかみながら近づいてきて言った。
「お兄ちゃんは誰?」
「お友だちだよ。」
青年がニコッと笑うと、子どもたちは、皆、満面の笑みを浮かべた。
長野けんじは、プロのギタリストでも、プロの写真家でもない。
「アマチュアですから」そう彼も答える。
確かに、彼のギターは独学であり、写真もまた独学であろう。
プロの目から見れば、ともに「しょせん素人の」と言われることはわかりきっている。
しかしながら、彼の写真からは、子どもたちの屈託のない笑い声が、聞こえる気がしてならない。
それは、彼が、作品を撮ろうとしてカメラを向けるからではなく、
子どもたちと仲良くなるためにレンズを覗くからであろう。
きっと、南国の子どもたちにはそれがわかるのだ。
だから、彼の写真には、何の疑いもなく、満面の笑みを浮かべる。子どもたちの笑顔がこぼれているのである。
「お友だちになったお兄ちゃん。今度はボクを撮ってよ。」
写真について、ことさら技術的なことを述べるつもりはない。
それは、彼の本質とはかけ離れたところにある問題だからである。
彼は、多くの人々に、自分の写真作品を見せたかったのではない。
彼は、多くの人々と、子どもたちとの思い出を共有したいだけなのだ。
カメラは彼にとって、子どもたちとを結ぶコミュニケーションの道具に過ぎない。
「今日はボクを撮ってよ。」
日がかたむきかけた木陰でそう言った少年は、本当は
「ボクのこと忘れないでね。」
そう言いたかったに違いない。
あれから何年が経っただろう。
あの少年はgenkiだろうか。
相模原市民ギャラリー学芸員
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