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ギャラリースタッフセレクション17 堀込 幸枝 新作展(Sachie Horigome)

この展覧会は、各ギャラリースタッフが注目する若手作家を、毎回厳選し紹介していくシリーズ展です。

平成19年3月1日(木曜日)から4月15日(日曜日)まで

出品作品

「びん」

「びん」 162×130.5、2007年

  • 2007年、162×130.5

「びん」

「びん」 194×162、2006年

  • 2006年、194×162

プロフィール

(写真)堀込 幸枝

  • 1981年生まれ
  • 2000年
    女子美術大学附属高等学校卒業
    女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻入学
  • 2003年
    第39回神奈川美術展 特選
    国際瀧富士美術賞 第24期奨学生
    シェル美術賞 2003‐2004 入選
  • 2004年
    同大学卒業 卒業制作賞受賞
    女子美術大学大学院美術研究科修士課程入学
    第40回神奈川県美術展 入選
  • 2005年
    大学院一年生グループ展(銀座、ギャラリー青羅)
    トーキョーワンダーウォール2005 入選
    シェル美術賞 2005 本江邦夫審査員賞受賞
    守谷賞受賞(奨学金)
  • 2006年
    大学院二年生グループ展(銀座、ギャラリー青羅)
    女子美術大学大学院美術研究科修士課程修了
    修了制作 美術館収蔵品賞受賞
    トーキョーワンダーウォール2006 入選

解説

堀込幸枝の作品について

堀込幸枝の画業は、まさに始まったばかりといえる。しかしながら、まろやかで美しい堀込の油彩は、これからを期待させる不思議ななにかを持っている。それに迫ってみたい。

美大生の学生時代というのは、自身のスタイルを模索し、様々な画材や素材に触れ、試作や葛藤する期間と言ってもいいだろう。堀込はパステル画と出会い、自分の資質を発見したのである。パステルのやや荒い粒子が造るまろやかな質感や奥深い色彩が堀込の感性と合っていたのである。

堀込は、パステル画を繰り返し描いていく課程で、初めは風景画であったが次第に静物画へと移行し、「びん」というモチーフに目が留まるようになる。何かを掴んだと思ったのだろう、それを大きな完成品として油彩へと転換させたのである。

堀込の絵画の下絵は描いては乾かし、描いては乾かし、画布に絵具を薄く塗り、100号程度で約2か月をかけて作り上げられる。そして、キャンバスの凹凸が目に見えなくなるほど、表面を均質化するのだ。そうすることで、パステルの美感を表現している。

画面の中に登場する「びん」というモチーフは、2003年からはじまったシリーズである。「びん」は、2003年から2007年の間、様々な変化を遂げている。

例えば、2004年の「静物2」という作品では、ある程度自然の秩序の中に沿って描画されている。「びん」はほの暗い部屋の隅に息を潜めるように配置され、陰影なども描かれており遠近感もある。つまり、物体の量感やガラスの硬さが自然の秩序に従って描画されているのだ。

また、「静物1」という作品では、「びん」の輪郭は曖昧になり、背景である地の部分に次第にとろけていくのである。遠近感は消失し、ガラス固有の硬さも表現されていない。もはや、それは静物という枠組みを超えて、心象画へと移行しているかのようだ。

作家の言葉によると、「素直に対象に向かっている」という状態で描いているという。「静物2」に対して、「静物1」の方がそれが強いというのだ。

どのように「静物1」のような絵画を描けるのか?。ここで、堀込のモチーフの組み方も紹介したい。(画像1参照)モチーフは、小さな箱の中に組まれる。背景に色紙を配置して、その前に「びん」を置く。時には、ビニールで隠して、わざと対象がはっきりと見えない状態で描く。そのことで、ぼわぼわとした画面を、想像からではなく写実的な描写から生み出しているのだ。

後に否定しているが、堀込は「「びん」は私」というコメントを残している。私は、堀込にとって絵は彼女自身の肌のようなものなのではないかと考えている。やわらかい、ぼんやり、しっとり、はかない、にぶい…日常感じた空気、感情の振幅、その日の体感気温、時代の気分など、20代前半を生きる若い画家の肌が感じた、なにかが画面には反映されている。それは、音のように目に見えないものであり、形態を持たないものである。「びん」はその心情を表す形態としてうってつけだったのである。薄ぼんやりとした期待感や不安感とでも言おうか。

堀込は「びん」がなければ絵が描けないと語る。それらを組み合わせ、配列することにより、表現の糸口を掴むのである。そして、もうひとつ意図があるのではないかと想像する。何か、「びん」という誰もが知っている言葉で、曖昧で漠然とした自己の表現が孤立せぬよう、社会との接続を図っているのではないだろうか。

相模原市民ギャラリー 美術専門員 木下 朝美

画像1

(画像1)

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