広報さがみはら No.1328 平成28年(2016年)1月1日号 4.5面 ---------- 新春対談 まちづくり、人づくりを考える 希望のたすきを明日へ!  リニア中央新幹線の神奈川県駅設置や圏央道の開通、また、在日米陸軍相模総合補給廠(しょう)の一部返還地や、共同使用が開始された敷地の活用など、相模原のまちは将来に向けて大きく変わろうとしています。「夢と希望が持てるまち」「魅力のあるまち」をめざしたまちづくりを引き継ぐのは、明日を担うたくさんのさがみっ子たちです。今回は「未来へたすきをつなぐ」をテーマに、教育、人材育成などについて、第91回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で総合優勝した青山学院大学陸上競技部の原監督と加山市長が対談。熱い思いを語り合いました。(司会 tvkアナウンサー 長澤彩子さん) 原晋青山学院大学陸上競技部監督 昭和42年広島県生まれ。広島県立世羅高等学校では全国高等学校駅伝競走大会で準優勝。中京大学でも日本インカレ5000mで3位に入賞。平成元年に中国電力陸上競技部に入部。5年で選手生活を終え、その後は営業などで活躍。平成16年に青山学院大学陸上競技部の監督に就任し、「誰もが楽しく走る『ワクワク大作戦』」を掲げ、昨年同校を箱根駅伝初優勝に導いた。 加山俊夫相模原市長 日々の積み重ねが箱根駅伝優勝に ■新年明けましておめでとうございます。今回は、第91回箱根駅伝で青山学院大学陸上競技部を総合優勝に導いた原監督をお招きし、加山市長と共に教育や人材育成についてお話を伺います。 加山 箱根駅伝、出雲駅伝の活躍は私たちに大きな希望と感動を届けてくれました。監督の「ワクワク大作戦」が見事に当たりましたね。 原 12年前、監督就任時に私がめざしたのは「10年後に優勝を狙えるチーム」でした。長期ビジョンに基づいて、半歩先をめざす…。それを繰り返し行ってきました。その中で心掛けたのは、「できないことではなく、できることを考えよう」ということ。「常に前へ向かってワクワクしながら、どうすれば夢が実現できるのかを考えよう」ということでした。  私の選手スカウトの基準は「男前である」ということ。男前とは「自分の言葉を持っているかどうか」ということです。例えば、「青山学院大学に入ったらこう頑張りたい」という具体的な言葉で自分の思いを発信できること、それが選手として育つためにとても大切なのです。  私は営業マン時代に、物事を完結させるためには「PDCA(Plan Do Check Action=計画する、実行する、評価する、改善する)」が非常に重要であることを学びました。スポーツの世界も、この選手をどう育てるのか、目標に向かってどう取り組むのか、その過程は同じなんです。 ■今のお話は市政にも通じますね。 加山 市政の運営も全く同じです。中・長期的な展望を持ちながら、現実的・今日的な課題にもしっかり対処していく。その積み重ねが大切ですね。 ■監督のお話を伺って、あらためて「教育」の意味を考えさせられました。加山市長は「教育」についてどのように考えていますか。 加山 子どもたちの学びの環境をしっかり築いていくことは、私たち大人の重要な使命であると考えています。市では、子どもたちに寄り添った教育に取り組むことができる教員を養成しています。「人が財産(たから)」を基本理念として本市の教員をめざす人を対象に平成21年に開塾した「さがみ風っ子教師塾」です。卒塾後、実際に教員になった人は254人(平成27年度実施相模原市立学校教員採用試験合格者を含む)。この教師塾を通して、「教育愛に燃える相模原市の教員」としての資質や実践力を身に付けてほしいと思っています。 原 非常に良い取り組みですね。教育はただ勉強を教えるのではなく、生き様をどう教えていくかが大切です。私もぜひ、その塾の講師になりたいですね。 子どもたちに寄り添った教育を ■教育の現場での具体的な取り組みを教えてください。 加山 不登校やいじめなど、子どもたちを取り巻くさまざまな問題に対処するため、順次各小学校への児童支援専任教諭の配置を進めています。また、教育的な 支援が必要な子どもたちに寄り添う支援教育支援員を市内の全小・中学校に配置しています。  「食」も大切なテーマです。子育て環境の負担軽減と、成長期の子どもたちの栄養バランスを考慮し、県内の政令指定都市では初めて、中学校の完全給食を実現しました。教室の空調設備やトイレの整備など、施設面での環境づくりもさらに進めたいですね。  また、教育現場だけでなく社会全体で子どもたちを見守っていくために、27年3月には、子どもたちの健やかな成長と権利を保障する「市子どもの権利条例」を制定しました。さらに11月には、子どもたちが抱えている悩みを相談できる「さがみはら子どもの権利相談室」を開設し、一緒に問題解決に取り組む体制を整えました。学校、地域、行政が一体となって、子どもたちをしっかりと守っていきたいと思います。  ■人を育てる環境づくりが大切なのですね。 原 「原がいるから強い」といわれるような組織にはしたくない。これは就任以来の私の信念です。一人の教員が一生懸命頑張ってその学校を良くしても、その教員がいなくなったら荒れてしまうのではだめ。学校、家庭、地域社会が一つになって教育を考えていく、そんな持続する環境づくりが求められるのではないでしょうか。  「ワクワク大作戦」で元気に ■「ワクワク大作戦」もそんな環境づくりの中から生まれたのですか。 原 選手が自分で考え、自分の言葉で発信し、コミュニケーションを取る中で小さな成功体験を積み重ねていく。それが「ワクワク大作戦」です。内面の能力をいかに引き上げるかを日頃から訓練することが大切ですね。  箱根駅伝は、いわば相模原市の代表として走っています。観ている人が「元気をもらった」とワクワクした気持ちになってもらえるよう、選手には躍動感のある走りをしてもらいたいと思っています。  ■相模原市でのスポーツの取り組みを教えてください。 加山 スポーツは豊かな市民生活を実現するためにとても大切です。「する」「観(み)る」「支える」スポーツの環境づくりのために「市スポーツ振興計画」を策定し、サッカーやラグビーの公式試合も開催できる相模原ギオンスタジアムなど、施設の整備も進めています。27年4月に同スタジアムの周りに完成したクロスカントリー仕様のジョギングコースは、実は原監督からのアドバイスを取り入れたものなんですよ。  ■監督は寮監もされていますが、共同生活の中で心掛けていることは? 原 寮は自分たちの家、だから点呼は取りません。お風呂の順番は自由、掃除はみんなが当番で行います。学生を信じ「門限は午後10時。必ず帰るように」とだけ決めました。寮は練習の疲れを癒やす安らぎの場でもあります。だから、自然体で暮らせるよう心掛けました。ただし、寮生活における決まりは明文化しました。「自由なこと」と「好き勝手」は違います。寮が「帰るのが楽しい場」であればルールやマナーは自然に守られます。一般家庭でのしつけも同じではないでしょうか。選手も子どもも、自分自身の力で成長できる環境づくりが大切なんだと思います。  加山 一流の選手になるためには規則正しい生活を基に、まずは人間性を磨く必要があること。これはあらゆる分野に通じると思います。 たすきを次世代へつなぐ ■相模原市の未来を担う子どもたちや市民にメッセージをお願いします。 加山 毎年市内の小学校を訪問し、子どもたちと触れ合い、話し合う場を設けています。そこでは夢や、住んでいるまちに対するさまざまな意見や要望が語られます。子どもたちの豊かで新鮮な発想にはいつも驚かされます。  本市はこれから将来へ向かって大きく変貌を遂げようとしています。その一つがリニア中央新幹線です。平成39年に開通し、橋本駅付近に神奈川県駅ができる予定です。また、圏央道の開通により首都圏や各地域との交通利便性が飛躍的に向上したほか、市内のインターチェンジ付近には4つの産業拠点を整備しているところです。一部が返還された相模総合補給廠の敷地の活用については、国際会議場や文化・研究・教育施設のほか、公園、スポーツ施設などを検討しています。こうした本市が持つポテンシャル(潜在力)を最大限に生かしたまちづくりを着実に進めるとともに、防災・減災対策、企業支援や雇用の創出など、幅広い分野で市民サービスの一層の向上を図っていきます。  本市で子どもを産み、育てることに喜びを感じてもらえるようなまちづくりを進めるため、子どもたち一人一人の成長を社会全体で応援し、安心して子育てができる環境の整備などにも積極的に取り組んでいきたいですね。  子どもたちが安全で安心して心豊かにワクワクした気持ちで過ごすことができるまちづくり、それは私たちの使命です。その子どもたちが、先人が築いてきた「まちの魅力」というたすきを受け継ぎ、次世代へとつないでくれることを心から願っています。 原 相模原市は、大学などの教育機関がたくさんあり、学園都市としての魅力も持っています。これからは官民一体となって教育現場を盛り上げていけたらと思います。また、相模原市は、小学校・中学校・高等学校・大学、そして働く場と、切れ目のない充実した生活環境が整っているので、これからも人が集まり、人口が増えていくと思います。一緒に相模原市を盛り上げていきましょう。  ■いよいよ明日、箱根駅伝がスタートします。連覇への意気込みをお願いします。 原 青山学院大学らしく笑顔でたすきをつなぎ、連覇を果たして、ぜひもう一度地元の皆さんと喜びを分かち合いたいです。 加山 皆さんの活躍は地元の誇りです。力強く連覇の言葉をいただいたので、明日、あさっては1位でゴールすることを大いに期待しています。みんなの夢と希望をさらに膨らませてほしいですね。72万市民全員で応援しています。頑張ってください。 青山学院大学が箱根駅伝2連覇をめざします!  1月2日(土曜日)・3日(日曜日)に開催される第92回箱根駅伝に、青山学院大学陸上競技部が8年連続で出場します。  前回は圧倒的な強さで初優勝を飾り、昨年10月12日に開催された第27回出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)を制するなど好調で、2連覇が期待されています。  市内の施設や青山学院大学相模原キャンパスなどで練習を重ねている選手たちを、ぜひ応援してください。 「日本一魅力あるまち さがみはら」をめざして 6つの基本項目 1 相模原教育の推進  次代を担う子どもたちの健やかな成長を願い、児童・生徒一人一人に寄り添った、きめ細かな教育の推進などに努めるとともに、生涯学習やスポーツ振興などの環境整備にも力を入れています。 2 お年寄りや障害者にやさしい医療・福祉の充実  今後の高齢社会等の進展に備え、高齢者が安心して暮らせるよう、地域包括ケアシステムの構築や、認知症施策の推進に取り組んでいます。また、総合診療医の育成、潜在看護師の復職支援など、地域医療体制の充実にも取り組んでいます。  3 子育て・働く女性の応援  女性が安心して子ど もを産み、育てることができるよう、小児医療費助成や、妊婦健康診査費助成の拡充、保育所・児童クラブの待機児童の解消などに取り組んでいます。 4 活力あふれる地域経済  新産業の創出や成長分野の開拓、中小企業の支援の推進、戦略的な企業誘致策などを展開し、地域経済の活性化に取り組んでいます。 5 ポテンシャルを生かしたまちづくり  リニア中央新幹線 の神奈川県駅設置や相模総合補給廠の一部返還に伴うまちづくりなど、将来にわたり、本市だけでなく周辺地域、日本全体の活性化や発展が期待できる大規模プロジェクトの推進に積極的に取り組みます。また、災害に強いまちづくりやクリーンで快適な水素社会の実現をめざします。 6 相模原市の魅力の発信  豊かな自然や充実した都市機能を備えた市街地、文化やスポーツなど、多様な地域資源の魅力を、広く市内外に発信します。