広報さがみはら NO.1256 平成25年(2013年)1月1日号 4・5面 新春対談 未来に飛び立て 銀河連邦友好交流25周年。宇宙に届け! 子どもたちの夢。  政令指定都市移行から3年、相模原市では未来に向けたまちづくりが進んでいます。昨年11月には「銀河連邦友好交流25周年」を迎え、各共和国との友好の絆がますます強まりました。相模原市も「はやぶさの故ふ る郷さ と」として、銀河連邦の仲間やJAXAと連携しながら、子どもたちに夢や希望を与えるさまざまな取り組みを進めています。年頭に当たり、「宇宙とつながる さがみはら」をめざしたまちづくりについて、加山俊夫市長と的川泰宣JAXA名誉教授に意見を交わしてもらいました。(司会 tvkアナウンサー 三浦綾子さん) ---------- 加山俊夫 相模原市長 的川泰宣(まとがわ やすのり) JAXA名誉教授 1942年広島県呉市生まれ。工学博士。 2005年、JAXA宇宙教育センターを先導して設立、初代センター長となる。 2008年6月NPO法人「子ども・宇宙・未来の会」(KU-MA)を設立、会長となる。日本の宇宙活動の「語り部」であり、「宇宙教育の父」とも呼ばれる。 ---------- 絆を強める、価値ある交流    —明けましておめでとうございます。まずは銀河連邦友好交流25周年、これまでの取り組みについてお聞かせください。  加山 銀河連邦は、昭和62年11月、当時の宇宙科学研究所〈現 宇宙航空研究開発機構(JAXA)〉の施設がある5つの市町(現在は6市町)で組織し、交流が始まりました。ユーモアとパロディの精神から始まった交流ですが、この間、子どもたちの留学交流、経済交流、さまざまなイベントでの市民交流など、大きな成果があったと思っています。  —25年を振り返り、印象に残っている出来事は何ですか。  的川 忘れられないのは25年前の、銀河連邦設立のセレモニーに際して、市の方から「NASAの長官からの祝電が欲しい」と言われて大変苦労したことです(笑)。何とか実現したのですが、その時NASAとの仲介をしてくれた友人に、「銀河連邦とは面白い組織ですね。宇宙科学研究所は地元の人たちと仲がいいんですね」と言われました。  銀河連邦は世界的に見ても大変ユニークな組織です。  ずいぶんと交流も進んでいて、うれしい限りですね。  —一昨年の東日本大震災以降、各共和国間の交流がより深まったと思いますが。  加山 被災地である岩手県大船渡市も銀河連邦の仲間で、いち早く支援をさせていただきましたが、銀河連邦があったからこそ「支援する力」を十分に発揮す ることができたと思っています。  銀河連邦の仲間の自治体が、どこよりも早く震災直後の人的・物的支援の点で対応をしました。本市では現在も職員を長期派遣して、復興に向けた支援を続け ています。  この間、お互いの絆はより強いものになりましたが、「宇宙」を通しての友好という範囲にとどまらず、日々の市民の安全・安心のための環境づくりや災害時の相互応援などでも連携が進み、とても価値のある交流だと思っています。 一緒に宇宙開発に参加する気持ちで  —JAXAとの連携も深まっています。  加山 そうですね。例えば昨年の金環日食の時には、市内の小学校で子どもたちがJAXAの職員の方々から観察方法などの指導を受け、また、一緒に観察し ていただきました。子どもたちにとってはJAXAの方々と直接交流することで、宇宙への興味や関心がより高まったのではないでしょうか。子どもたちに夢と希望を与える、影響力のある施設が身近にあることを、とてもうれしく思っています。  それに、JAXAのすぐそばには市立博物館があります。市立博物館とJAXAが連携して、いろいろなイベントを企画するなど、これからも関係を深めてい きたいと思っています。  的川 金環日食当日は、観測のために市立小学校の登校時間をずらしましたよね。あれはおそらく全国で唯一ではないでしょうか。  — これまでも「はやぶさ」のカプセルの公開、「はやぶさの日」制定など、明るい話題に事欠きませんでした。  加山 カプセルが戻った後、いち早く市内で公開していただきましたが、日本全国からたくさんの方に本市へお越しいただきうれしかったですね。  また、銀河連邦の仲間で話し合い、「はやぶさ」が教えてくれた「あきらめない心」「努力する心」を伝えていくため、「はやぶさ」が地球に帰還した6月13日を記念日にしようと、「はやぶさの日」として制定し、申請・登録認定を受けました。  —地域連携が進む中で、JAXAとしては何を大切に考えていますか。  的川 研究開発における基礎実験、打ち上げ、管制…。「はやぶさ」に限らずいろいろな衛星や探査機は、その準備のプロセスから打ち上げ後も、必要な作業をそれぞれの共和国にある関連施設で行っています。日本の宇宙開発にとって、銀河連邦は欠かせない存在だと言えますね。  相模原市はそれら全体の拠点として大きな役割を果たしていただいています。  私たちの事業には、地元の方々の協力が欠かせません。「地元と仲良く」。これは私たちの大切なテーマです。  これからも地元のご協力を引き続きお願いしたいですし、今後は、さらに交流を深め、皆さんが「宇宙開発に自分も参加しているんだ」という気持ちを持っていただけるような、そんな関係を築いていけたらいいですね。 未来に向けて夢、希望、ロマンを  —今後どういうまちづくりに取り組まれますか。  加山 相模原市は戦後生まれの政令指定都市です。まだまだこれからいろいろな環境整備が必要です。首都圏の広域交流拠点都市にふさわしいまちづくりを行い、日本を経済的にも引っ張っていく、そのためにもJAXAとの連携を深め、宇宙科学や先端技術関連産業などが育つ、新しいモノづくりの都市として発展させたいですね。  子どもたちには夢を持って、健やかに育ってほしい。これが何より大事です。そして、これからのモノづくり産業を支え、日本をリードできるような都市づくりに参加してほしいと思います。  —まさにこれからの相模原市を担っていくのは、子どもたちということですね。  加山 そのとおりです。そして、子どもたちのためにも良い教師を育てなければなりません。「人が財産(たから)」。これがさがみはら教育の理念ですが、この理念を実践し、市の求める教師を育てるための機関として「さがみ風っ子教師塾」をつくりました。的川先生には、その塾長になっていただいています。  的川 学校はとても大切な存在です。教師塾を基に、学校と家庭や地域が連携し合えるような環境を、全国に広げていきたいと思っています。  そして、宇宙にあふれる魅力いっぱいの素材を思い切り活用して、子どもたちの育成にも努力していきたいです。  私たちの世代は「スプートニク世代」、少し若い人は「アポロ世代」。これからは「はやぶさ世代」、そして「はやぶさ2世代」にぜひ新しい日本を作っていってほしいと思います。  —いよいよ来年、「はやぶさ2」の打ち上げが予定されていますね。  的川  今、一生懸命準備しています。また皆さんに希望を持って応援していただけたらと思います。  加山 これをきっかけにますます子どもたちに、宇宙やいろいろなことに夢や希望を抱き、ロマンを感じてほしいですね。  子どもたちをはじめ若い世代が夢や希望を持てる地域社会をつくること、それが本当に重要だと感じています。  だからこそ、今、われわれ大人が子どもたちの未来のために何をすべきかを真剣に考え、方向を決め、その実現に向けて一生懸命努力する。それが本当に求められている時代ではないでしょうか。 ---------- JAXAとの連携授業〈市立小学校の取り組み事例〉 「はやぶさ」に続けそして「はやぶさ」を越えていこう 鶴の台小学校 校長 金山 光一  日本の子どもたちに大きな感動と夢をもたらした「はやぶさ」の地球への帰還。本校ではこの時の子どもの気持ちを大切に育てようと、今回、4年生の授業のテーマに「宇宙」を取り上げました。そこで掲げた目標は「ペットボトルロケットを正確に着地点に到達させる」です。  JAXAの職員から、本物のロケット作りの話を聞いたとき、子どもたちの心に火がついたのを感じました。授業では、実際の「はやぶさ」プロジェクトのようにチームを組み、何度も飛ばす実験をして集めたデータをもとに、「水の量をあと13㏄減らそう。圧力を3・2気圧に下げよう」と話し合う、真剣な目をした子どもたちを見ることができました。そして授業の最後には、全てのチームのロケットが正確な軌道を描いて着地点へ向かっていきました。  「はやぶさ」は、チームワークの大切さと絶対にあきらめずに最後までがんばる気持ちを教えてくれました。相模原の未来を担う子どもたちよ、「はやぶさ」に続け、そして「はやぶさ」を越えていこう! ---------- 6月13日は「はやぶさの日」 小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還したのが6月13日。数々の困難を乗り越えての帰還に学び、「あきらめない心」「努力する心」の大切さを伝えるため、銀河連邦が制定したんだ! ---------- 銀河連邦友好交流25周年記念 はやぶさの故郷 潤水都市さがみはらフェスタ2012 キーワードは「はやぶさ」「宇宙」「銀河」  昨年11月24日・25日、在日米陸軍相模総合補給廠しょうを会場に21万人の来場者を記録した「潤水都市さがみはらフェスタ2012」。  今回は、銀河連邦友好交流25周年を記念して行われ、「はやぶさ」「宇宙」「銀河」をキーワードに、JAXAコーナーや星の命名イベントなどバラエティに富んだ催しが繰り広げられました。  24日に行われた「銀河連邦友好交流25周年記念セレモニー」には、各国首脳が一堂に会し、銀河連邦物産展では、各国自慢の料理に人気が集まり、行列ができるほど。  同じく24日の記念イベント、漫画家松本零士さんのトークショーでは、松本さんの漫画や宇宙に関する楽しい話で会場が盛り上がりました。さらに、松本さんから直筆サイン入りの「銀河鉄道999」の作品が市にプレゼントされるというサプライズも。この作品は市役所本館1階ロビーに飾られています。 ---------- 銀河連邦とは 相模原市の呼びかけで昭和62年11月8日に当時の宇宙科学研究所〈現 宇宙航空研究開発機構(JAXA)〉の研究施設のある2市3町(当時)がユーモアとパロディの精神で連邦国家を組織。相互の理解と親善を深め、宇宙への夢とロマンを育むことを目的に、子ども留学交流やスポーツ、経済交流などを行っている。連邦本部は相模原市。平成22年4月1日に北海道大樹町が加盟。現在、構成市町は4市2町となっている。毎年、各共和国ではさまざまな交流事業が行われている。 平成24年度の主な交流事業 ❶タイキ共和国(北海道大樹町) 柏林公園まつり 秋の味覚を満喫できるイベント。銀河連邦物産展を実施。 ❷ノシロ共和国(秋田県能代市) おなごりフェスティバル 各地の代表的な夏祭りが一堂に集結。銀河連邦物産展を実施。 ❸サンリクオオフナト共和国(岩手県大船渡市) 三陸大船渡さんままつり 炭火焼さんまを無料提供。銀河連邦物産展を実施。 ❹サガミハラ共和国(神奈川県相模原市) 子ども留学交流 平成24年度は相模原市で実施。3泊4日での体験交流。 ❺サク共和国(長野県佐久市) 銀河連邦星の町 スピードスケート親善大会 オリンピックで活躍した選手も出場したことのある交流大会。 ❻ウチノウラキモツキ共和国(鹿児島県肝付町) うちのうら銀河マラソン大会 銀河連邦設立を記念して始まった、スポーツ交流事業。