広報さがみはら NO.1229 平成23年(2011年)11月15日号 6・7面 ---------- 藤野ふるさと芸術村創成から25周年 〜人と芸術と自然が共生するまち〜  第二次世界大戦のさなか、藤田嗣治や猪熊弦一郎、佐藤 敬など、日本を代表する近代画家たちが疎開し、創作活動をしていた藤野。「街の通りには『ピカソ』や『マチス』の名を付け、湖を見下ろす丘に住宅や学校を整備して……」。戦況が厳しくなる一方の当時、芸術家たちは藤野の大自然の中で、そんな夢を描いていたといいます。  それから半世紀……。1986年に旧藤野町で、芸術を通した独創的なまちづくり「藤野ふるさと芸術村」が創成され、その2年後に芸術村の取り組みを町内外にアピールすることを目的に活動する「藤野ふるさと芸術村メッセージ事業」がスタートしました。この取り組みは、合併後に市の「さがみはら文化振興プラン」に位置付けられ、今回ご紹介する活動をはじめ、さまざまなイベントなどが活発に行われています。  現代の画家や陶芸家たちからも慕われ、現在までに多くのアーティストたちが移住している藤野。ここに住む人々は、芸術がすぐ隣にある暮らしを「何気ない日常」として過ごしています。 藤野ふるさと芸術村メッセージ事業(通称:藤野アートスフィア)とは  「藤野ふるさと芸術村」の取り組みを実現するために、1988年からスタート。「文化を守り伝える」活動や「新たな文化の創造・育成」などを目的とした芸術・文化事業に対して助成金を交付しています。 25年の歩み 1986年(昭和61年)  旧藤野町と県による「藤野ふるさと芸術村」のプロジェクトを創成 1988年(昭和63年)  「藤野ふるさと芸術村メッセージ事業」をスタート  「芸術の道」の野外環境アートの設置を開始 1994年(平成6年)  人形浄瑠璃公演により30年ぶりに大石神社の廻(まわ)り舞台が復活 1995年(平成7年)  県立藤野芸術の家がオープン 2002年(平成14年)  「藤野フィルムコミッション」を設立 2004年(平成16年)  シュタイナー学園を誘致するため旧藤野町が『藤野「教育芸術」特区』を申請、認定される 2005年(平成17年)  「シュタイナー学園」が開校 2007年(平成19年)  旧藤野町と相模原市が合併。「藤野ふるさと芸術村」のプロジェクトが市へ引き継がれる 2008年(平成20年)  各ジャンルの在住作家の意見、デザインを取り入れた「藤野観光案内所ふじのね」が藤野駅に隣接してオープン 2010年(平成22年)  「さがみはら文化振興プラン」の改定に伴い、緑区藤野エリアでの独創的な取り組み事業として盛り込まれる。  在住作家の交流発信拠点「ふじのアート・ヴィレッジ」がオープン 芸術イベントの年間スケジュール 5月:ふじのね駅前マーケット    藤野ぐるっと陶器市 8月:ひかり祭り 9月:ふじのART収穫祭 10月:藤野歌舞伎    ぐるっとお散歩篠原展    藤野音響(ねっきょう)まつり 11月:藤野文化祭    藤野の四季写真展    Sunny Side Walk 12月:「緑のラブレター」イルミネーション    (中央自動車道下り線藤野パーキングエリア) 3月:さがみはら市民劇団 ふじのキッズシアター 藤野を代表する野外アート 芸術の道  1988年から作品の設置を開始。名倉地域を中心に、国内外のアーティストによる29点の野外環境アートが点在しています。山裾に、小道の脇に、畑の隣に置かれた作品たち。四半世紀のときを経て、今では、まちの風景の一部になっています。 お問い合わせ  藤野観光案内所 ふじのね(藤野駅隣) 電話042−687−5581 芸術村で復活した伝統芸能 藤野歌舞伎  明治初期ごろから農家の人々が演じていた地芝居が原型。戦後の高度成長期に衰退していましたが、1992年にメッセージ事業の一環として復活。毎年10月に定期公演を行い、後継者の育成にも取り組んでいます。 芸術村で誕生した活動 さがみはら市民劇団  ふじのキッズシアター  2001年に誕生。一般公募で集まった子どもたちが、大人と協力して作品を創り上げていきます。メンバーである演劇の専門家が演技指導をし、表現する喜びや感動を分かち合うことを目的に活動しています。 人と人が手を携えた活動を重ねて25年─ 活動の主体は、行政から市民へ  行政が始めた「藤野ふるさと芸術村」の取り組みが、年月を経て地域に根付いてきました。市民が知恵と力を出し合って企画・運営を行い、法整備や資金の面で市がサポートするスタイルに変わりつつあります。 シュタイナー学園  子どもの発達段階に合わせて創造性と芸術性に満ちた教育を実践している私立の小・中一貫校。廃校となった名倉小学校跡地の有効活用を図るため、国から「藤野『教育芸術』特区」の認定を受け、2005年4月に開校しました。市内はもちろん、芸術を通して行われる教育に関心の高い市外や藤野に移住した家庭の子どもたちも通っています。 ふじのアート・ヴィレッジ  「藤野に定住しているアーティストたちが気軽に作品を展示・販売できるスペースを作ろう」と地域の人たちが中心となり、2010年にオープン。並んで建つ9棟のコンテナが、それぞれに独立したギャラリーでは、アーティストがその場で作品を制作することもあります。 お問い合わせ 同所(中村さん) 電話090−5564−6776 Sunny(サニー) Side(サイド) Walk(ウォーク)  2005年から始まったイベント。紅葉真っ盛りの季節に、散策できるエリアで一般の民家を開放し、アーティストの作品を展示・販売やライブを行います。開催期間中は、県外からも訪れるアートファンが、街を歩きながら芸術に浸る姿があちこちに。今年は9軒のオープンハウスを設け、50人以上のアーティストが参加しています。 開催期間 11月30日(水曜日)まで(開催日時は各ハウスで異なります) 会場 日連地域周辺 お問い合わせ アトリエ杼(ひ) 電話042−687−3984 11月19日・20日の来場者先着各50人にプレゼント  在住作家のさとう ますよさんが藤野の山の落ち葉を加工して作ったぽち袋「たぬきのはっぱ」を、藤野観光案内所ふじのねで配布します。 ※「広報さがみはら」を見た、と伝えた人限定です。 多種多様なアートを受け入れる癒しのまちを体感してください 市観光マイスター 落合幸一さん  藤野ふるさと芸術村では、行政が支援に徹し、作家が個性と創造性を発揮できるように創作や表現するための環境を整えているため、多種多様なジャンルの作家が集まっているのが特色の一つです。大自然が展示スペースにもなる藤野は、都会では受け入れられにくい個性的な作品も違和感なく存在できてしまう包容力があります。「豊かな自然と個性あふれる作品を一緒に味わう」。都会の美術館では体験できない楽しみ方ですよね。  ここは、まち全体が「癒しの温泉」のような所です。心身を癒してくれる大らかなアートと自然を、ぜひ体感しに来てみてください。 藤野ふるさと芸術村25周年記念事業 藤野の自然から生まれた作品たち 〜疎開画家と在住作家の作品展  芸術村の原点回帰をテーマに、疎開画家と在住作家の作品を集めた美術展です。「レオナール・フジタ」の名で世界的にも有名な藤田嗣治をはじめとする疎開画家の収蔵作品約20点や、藤田嗣治から佐藤 敬に送られた直筆はがき(初公開)などを展示。ドキュメンタリー映画「藤野に疎開した画家たち」の上映も行います。 期間 12月2日(金曜日)〜11日(日曜日) 時間 午前10時〜午後5時 会場 藤野総合事務所 費用 無料 お問い合わせ 藤野まちづくりセンター 電話042−687−2117