障害者差別解消に向けた合理的配慮の事例集 表紙・見開き・目次 ---------------------------------- 表紙 障害者差別解消に向けた合理的配慮の事例集 〜障害の特性を理解し、適切な配慮を〜 令和6年4月から「民間事業者」でも合理的配慮の提供が義務化 相模原市 ----------------------------------- 見開き はじめに  相模原市では、障害の有無にかかわらず、誰もが安心して暮らすことのできる 「共にささえあい 生きる社会」の実現に向けて、障害に関する理解促進や権利擁護の 推進などに取り組んでいます。  また、令和3年6月には、障害者差別解消法が改正(公布)され、令和6年4月から これまでの国や地方公共団体などの行政機関等に加え、民間事業者にも合理的配慮の提供が 義務化されることになりました。  こうしたことを踏まえ、市民、事業者の皆様さまに、まずは障害と合理的配慮のことを知って いただき、障害のある方と接する場面などで参考となるよう、障害ごとの特性や合理的 配慮を分かりやすく紹介した冊子を作成しました。  本冊子には、障害の説明や障害者への「対応・配慮」について、障害者団体が運営する 「障害への理解を進める情報発信サイト さーくる」を 基に、市内の障害者団体等にご協力をいただき掲載しています。また、障害ごとの 「合理的配慮の提供事例」については、障害者団体や障害福祉サービス事業所などから 寄せられた事例等を掲載しています。  ただし、障害の種類や程度は多様ですので、この冊子に掲載している事例に類似した出来事であっても、 場面によっては、適切な合理的配慮は掲載している対応や配慮と異なることがあります。 この冊子を参考としつつも、実際の事案においては、その時その人に合った柔軟な対応が求められますので、 個別の事案ごとに、具体的な場面や状況に応じた判断をお願いします。  障害のある方が不当な差別的取扱いを受けることなく、適切な合理的配慮の提供により、 地域の一員として笑顔で暮らせる共生社会の実現に向けて、本冊子が、皆さまに活用されることを期待しています。  相模原市 ----------------------------------- 目次 障害者差別解消法とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 不当な差別的取扱いとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 合理的配慮とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 視覚障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 聴覚障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 盲ろうの方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 肢体不自由のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 内部障害、難病に起因する障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・10 重症心身障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 知的障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 発達障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 精神障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 失語症・言語障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 高次脳機能障害のある方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 知っておきたい障害者に関するマーク・・・・・・・・・・・・・・・・24 ----------------------- 1ページ  障害者差別解消法とは  正式には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」といい、すべての 国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら 共生する社会の実現を目指し制定されました。  国の行政機関や地方公共団体等及び民間事業者による「不当な差別的取扱い」の禁止を するとともに、「合理的配慮の提供」を求めています。それらを社会において実効的に 推進するための基本方針や指針の策定等の措置、相談・紛争解決の体制整備等の国や 地方公共団体等における支援措置について定めています。  不当な差別的取扱いとは  不当な差別的取扱いとは、正当な理由がないのに、障害を理由としサービスの提供を 拒否したり、制限したり、また障害のない人には付けないような条件を付けたりすることです。  合理的配慮とは  合理的配慮は、障害のある方から、社会的障壁※を取り除くために何らかの対応を必要としているとの 意思が伝えられた時に、負担が重すぎない範囲で対応をすることが求められるものです。重すぎる負担が あるときでも、障害のある方に、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり方を提案することを 含め、話し合い、理解を得るよう努めることが大切です。 ※社会的障壁:障害のある方が日常生活や社会生活を送る上で、支障となる事柄を指します。 -------------------------------------------------- 2ページ  視覚障害のある方  視覚障害とは、視力等に何らかの障害があることをいいます。一言で視覚障害と言ってもさまざまな 見え方や特徴があります。全く見えない人だけでなく、文字を読むことができても歩いているときに 障害物にぶつかったり、つまづいてしまう人、障害物は避けて歩くことはできるが文字が読めない人などがいます。 ○視力の障害:全く見えない全盲と、眼鏡で矯正しても視力が0.3未満である弱視 ○視野の障害:本来なら見える範囲の中で、見えない部分があったり、筒を覗いて見たように、見える範囲は狭い状態 ○明るい場所で見えにくい、あるいは暗い場所で見えにくい障害 ○特定の色に対し判別しづらい障害 など 対応・配慮 ・話しかけるとき  話しかけるときは、まずは名乗ってください。誰からの声かけか分からないと困ってしまいます。  誘導するときには、肩や腕を貸す形で、半歩前を歩いてください。また、周りの状況を伝えてください。 ・駅のホームやバス停で  援助の前に「電車にのりますか?」などと聞いていください。降りたばかりかもしれません。  乗客の列が動いたら「前に進めます」、「列が動きました」などを教えてください。 ・横断歩道で  「青になりました」などと声をかけてもらうと助かります。 -------------------------------------------------------------- 3ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  確定申告のため税務署に行かなければならないが、視覚障害があるため、細かい文字が見えないことが心配である。 視覚障害があることを自分から税務署の職員に申し出るのは気が引けてしまう。(全く見えないわけではないので、見えにくいことが伝わりにくい。)  対応  相談員が同行し、本人の了解を得たうえで税務署の職員に視覚障害があることを告げたところ、マンツーマンで丁寧に文字を読み上げる対応をしてくれた。  申出等  業務の一環として技術向上のための外部研修を受けることができるが、視覚障害に対応した研修が なかなか見つからず、他の職員と比べて研修の機会が少なくなってしまう。  対応  視覚障害者団体に相談して該当する研修の実施情報の提供を受け、職員の研修の機会を確保できた。  申出等  買いたい商品があるが、陳列棚のどこに置いてあるのか、また価格がわからない。  対応  商品が置いてあるところまで案内し、価格や機能などの表示情報を読み上げてお伝えした。  申出等  銀行のATMや飲食店の券売機などを使用したいときに、タッチパネル式になっていると操作できない。  対応  (ATMについては暗証番号を聞くことについてご理解いただいた上で)店員がATMや券売機などのタッチパネル操作を代行した。 -------------------------------------------------------------- 4ページ  聴覚障害のある方  聴覚障害とは、聞こえない状態(ろう)と聞こえにくい状態(難聴)のことをいいます。 外見上は障害があることがわからないことが特徴です。このため、聴覚障害のある人が後ろから来る車の音に気付かなくて 怖い思いをしたり、電車の中のアナウンスが聞こえず困ったりしても周囲の人には分かりません。  聴覚障害と一言で言っても、中には、補聴器や人工内耳などによって軽減できている人もいますが、障害のない人の聞こえ方とは異なります。  聴覚障害のある人は、それぞれのコミュニケーション方法を身につけています。音声での会話、手話、筆談、 読話(話し手の口の形や動きで話を読み取る)など、さまざまな方法があります。多くの人は、どれか一つの方法だけを使うのでなく、 いくつかの方法を、相手や場面に応じて組み合わせて使っています。 対応・配慮 ・手話通訳者・要約筆記者がいるとき  本人に向かって話してください。  伝わっているかどうか、確認してください。手話通訳者がいるから大丈夫だと思って、聞こえる方のペースで話していると十分に伝わらないことがあります。 ・筆談で対応するとき  短い文で書いてください。長い文は理解しにくいです。  日常使う漢字を使ってください。  記号や図を用いて表現を明確にしてください。 -------------------------------------------------------------- 5ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  プラネタリウムの団体投影(小学生の学習投影)について、観覧する児童が聴覚障害(補聴器使用)があるため、引率教員から、 できる限り、投影時に文字表記の要望があった。  対応  予め投影内容が把握できる学習指導案を引率教員に送付し、児童に事前学習を行ってもらうことで、内容の理解を深められるように工夫した。 投影の際も、専門用語や学習のまとめ等を文字で表記できる準備を行った。  申出等  職場で開催する研修に聴覚に障害のある職員が参加することになり、本人から研修で使う資料を事前にほしいとの申し出があった。  対応  スクリーンに投影する資料(研修参加者に配布するものとは別。もっと詳細な資料)を読み原稿付きで事前に渡した。 研修中はできるだけ読み原稿に沿って説明するよう心がけた。  また、不明点があれば研修終了後にメールで問い合わせるよう伝えた。  申出等  飲食店ではメニュー表への指差しで注文をしているが、細かい希望を伝えることが難しい。  対応  麺類を扱っているお店で、これまでは注文された麺類を出すだけだったが、筆談ボードを使うことによって、 「固い麺か柔らかい麺か」、味付けについて「辛口か甘口か」などを店員が聞けるようになり、他のお客と同じように細かい注文にも対応できるようになった。 -------------------------------------------------------------- 6ページ  盲ろうの方  盲ろうとは、視覚と聴覚の重複障害のことをいいます。盲ろうは、大きく分けて次の4つのタイプがあります。  ○全盲ろう:全く見えず、全く聞こえない状態  ○全盲難聴:全く見えず、少し聞こえる状態  ○弱視ろう:少し見えて、全く聞こえない状態  ○弱視難聴:少し見えて、少し聞こえる状態  また、「盲ろう」になる経緯もさまざまで、大きく分けて次の4つのタイプがあります。  ◇視覚障害があり、のちに聴覚障害を発症したもの(盲ベース盲ろう)  ◇聴覚障害があり、のちに視覚障害を発症したもの(ろうベース盲ろう)  ◇先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症したもの(先天的盲ろう)  ◇成人期以降に視覚と聴覚の障害を発症したもの(成人期盲ろう)  対応・配慮 ・コミュニケーションをとるとき  手書き文字や触手話※、指点字※でコミュニケーションを取ります。  言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝えてください。  状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)などを説明してください。  ※触手話:話し手が手話を表し、盲ろう者がその手に触れて伝える方法です。  ※指点字:盲ろう者の指を点字タイプライターの6つのキーに見立てて、左右の人差し指から薬指までの6指に直接打つ方法です。 -------------------------------------------------------------- 7ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  就職試験において、筆記困難なためパソコンを使用させてほしい。  対応  受験者の障害に対応しているパソコンの持ち込みを認め、電子データを用いて出題・解答を行った。  申出等  飲食店に入ったが、混雑状況や空席状況が分からない。店員が声をかけてくれても聞き取れないことがあり困ってしまう。  対応  店員がそばまで行き、手のひらに「○(空席がある)」か「×(空席がない)」かを指で書いてお知らせした。  また、空席がある場合には、店員がそこまで案内した。  申出等  難聴のため筆談をお願いしたが、弱視でもあるので細かいペンや小さな文字では読み取りづらい。  対応  太いペンで大きな文字を書いて筆談を行った。    申出等  聴覚障害者向けのイベントに参加したところ舞台上のスクリーンに要約筆記が表示されていたが、 弱視でもあるのでスクリーン上の文字が読み取りづらい。  対応  本人が所持していたパソコンと要約筆記者のパソコンをつなぎ、手元のモニターにも要約筆記が表示されるようにした。   -------------------------------------------------------------- 8ページ  肢体不自由のある方  肢体不自由とは、四肢(手や足)又は体幹(胴体)や顔に何らかの障害があることをいいます。  人により、障害の部位、不自由の程度、原因はさまざまで、右手・右半身だけ、あるいは両足、 さらには全身の運動・動作が不自由という場合もあります。体の片側が麻痺しているため、 バランスが悪く常に転倒の危険性がある方、全身に障害があるため、姿勢の保持が困難な方もいます。  対応・配慮 ・手の不自由な方  食事の際に、箸よりもスプーンやフォークを望む場合がありますので、配慮してください。  文字を書いたりお金の扱いなどの細かな手先の作業は難しい面があるので、配慮してください。 ・足の不自由な方  バスや電車などの乗り物に、乗り降りする人を見かけたら、運転手に一声かけたり、安全な乗車のサポートをしてください。 ・車椅子を使用している方  車椅子は、それを使う人の足です。身体の一部であると認識し、最低限のエチケットを守ってサポートしてください。  車椅子に乗っているからといって、何から何まで介助が必要なわけではありませんので、何をしてほしいか確認をしてください。 そのときの体調や道路などの環境によってサポートの内容も異なりますので、その場にあった配慮をしてください。 -------------------------------------------------------------- 9ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  お手洗いの水道で手を洗う際、ポンプ式の石鹸だと、力を入れなければならないため難しい。  対応  自動式センサーの石鹸を設置し、手洗いをスムーズに行えるようにした。  申出等  下肢の障害のため歩行が難しく、申請や証明書発行手数料の支払いの際に極力窓口を行き来しないよう対応してほしいとの要望があった。  対応  椅子に座った状態での対応が合理的配慮だと判断し、申請書の記載、申請、手数料の支払いを全て座ったままの状態で行った。  申出等  飲食店へ行ったときに、まだ席はあったのだが、車椅子のまま利用できる入り口付近のテーブルは、すでに他のお客が使用していた。  対応  入口付近のテーブルを使用していたお客にご了解いただいた上で、車椅子のお客も利用できるよう配席を変更した。  申出等  障害により指を動かすのが難しく、会計の時に財布から小銭を取り出すのに手間取ってしまう。  対応  申し出があったことから、本人によく確認しつつ、店員が代わりに小銭を取り出して会計を行った。 -------------------------------------------------------------- 10ページ  内部障害、難病に起因する障害のある方  内部障害には、7つの障害があります。  内部障害の共通の悩みは、外見からは障害があることが分かってもらえない、いわゆる「見えない障害」という点です。  そのために周囲の理解が得られにくく、電車やバスの優先席に座っていても、マナーを守っていないように見られて 嫌な思いをすることがあります。  難病は、医学的に明確に定義された病気の名称ではありません。一般的には、原因や治療法が解明されていない疾病に対して使われます。 病気の経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護などに著しく人手を要するため、家族の負担が重く、 また精神的にも負担が大きくなります。  難病のある方は、長期的な治療を必要とし、病名や病態が知られていないために周囲の人に理解されにくく、就業など、 社会生活への参加が進みにくいこともあります。神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病などさまざまな疾病により障害が生じます。 ・心臓機能障害  全身に必要な血液を送り出すポンプの役割を果たす心臓の機能が、いろいろな病気により低下してしまい、日常生活に支障をきたしています。 ・腎臓機能障害  いろいろな病気により、腎臓の働きが低下又は、機能しなくなり、身体にとって有害な老廃物や水分を排泄できなくなり、不必要又は、 有害な物質が身体に蓄積する状態です。そのため、人工透析を行い、腕の血管(シャント)から血液を機械に通して老廃物・水分を取り除くことが必要です。 ・膀胱・直腸機能障害  尿をためる膀胱、便をためる直腸がいろいろな病気のために機能低下又は機能を失った状態です。そのため、排泄物を体外に排泄するために人工肛門・人工膀胱を 造設する方もいます。これらの方をオストメイトといいます。   ・小腸機能障害  いろいろな原因によって、小腸が広い範囲に切除された場合と、小腸の病気によって働きが不十分になり、消化吸収が妨げられ、通常の経口摂取で栄養維持が困難な状態です。 栄養の補給として鼻から胃や十二指腸までチューブを通したり、直接お腹から胃へチューブを通し、その管を使って栄養補給をします。 -------------------------------------------------------------- 11ページ ・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害  このウイルスは、発症するとリンパ球を破壊し、免疫機能を低下させ、発熱、下痢、体重減少、全身倦怠感などが現れます。  特定の症状が現れたときに、エイズ発症となります。 ・肝臓機能障害  いろいろな原因によって肝臓の機能が低下した状態です。  肝臓の機能が低下すると、倦怠感、黄疸、浮腫(むくみ)、出血傾向(あざができやすい)、食道・胃の静脈瘤破裂による吐血、意識障害などが生じやすくなります。 ・呼吸器機能障害  いろいろな病気により、肺の機能が低下して、酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかずに酸素が不足する状態です。  対応・配慮 ・心臓機能障害の方  重い物を代わりに持つなどの配慮をしてください。また、階段はなるべく避け、エレベーター・エスカレーターを勧めましょう。  心臓に刺激を与えて脈拍を正常に調整するペースメーカーを埋め込んでいる方がいます。携帯電話の電波は、ペースメーカーに 影響を及ぼす危険がありますので、人混みや電車等の優先席付近では電源を切ってください。 ・腎臓機能障害の方  人工透析治療を週3回、3時間から4時間かけて行うために、通院しなければならないことを理解してください。  文字を読んだり、書いたりする場合に、視力に問題がないか、確認してください。腎性網膜症、糖尿病性網膜症などにより視力が低下している方がいます。 -------------------------------------------------------------- 12ページ ・膀胱・直腸機能障害の方  プライバシーには十分配慮して、原因疾患などは聞かないようにしてください。  ゆとりのある広めの洋式トイレに案内してください。設置してある場合は、オストメイト対応トイレに案内してください。 ・小腸機能障害の方  栄養補給のために必要な時間に配慮してください。栄養補給などのために、決まった時間に注入しなければなりません。 ・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害の方  プライバシーには十分に注意してください。特に感染原因は聞かないようにして、個人情報が他に漏れないような配慮をしてください。 ・肝臓機能障害の方  吐血や意識障害を起こした時には、静かに側臥位(そくがい)(右または左を下にして寝た状態)をとり、 血液がのどに詰まらないように注意して、できるだけ早く救急車を手配してください。 ・呼吸器機能障害の方  話しをするときは、椅子を勧め、楽な姿勢でゆっくり話しをしてもらい、長時間にならないようにしてください。 呼吸器機能障害のある方は、慢性的呼吸困難、息切れ、咳などがあり苦しい状態にあります。 ・難病の方  難病それぞれで特性が異なり、その特性に合わせた対応が必要です。体調がすぐれないときに休憩できる場所を確保してください。 通院ができるように配慮してください。 -------------------------------------------------------------- 13ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  定期的に通院する必要があるため休暇取得日数が多くなり、同僚に対して気が引けてしまう。  対応  本人の希望を踏まえて、内部障害があることや必要な配慮について職場で説明を行うなど、本人が休暇を取得しやすい職場の雰囲気作りを行った。  申出等  日によって体調が変動するので、一律に定められている就業時間・休憩時間では、業務を行うことが難しい日がある。  対応  体調不良の日には、就業時間内でも休憩室を利用できることとした。  申出等  学校にいる間も定期的に薬を飲む必要があるが、うっかり飲み忘れてしまうことが何度もあった。  対応  生徒本人がアラーム機能付きの時計を持つようにしたほか、担当教員も一緒に時計のアラーム時間を設定して、薬の飲み忘れがないよう声をかけるようにした。 -------------------------------------------------------------- 14ページ  重症心身障害のある方  重症心身障害とは、自分で身体を動かすことが難しい重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複していることをいいます。 ほとんど寝たままで自力では起き上がれない状態の方が多く、移動や食事、着替え、洗面、トイレ、入浴等が自力では困難なため、日常のさまざまな場面で介助者が必要です。  また、重症心身障害と合わせて、常に医学的管理下でなければ、呼吸をすることや栄養を摂ることが困難な医療的ケアが必要な方もいます。  対応・配慮 ○人工呼吸器などを装着して専用の車椅子で移動する方もいますので、電車やバスの乗降時等において、周囲の人が手伝って車椅子を持ち上げる等の配慮をしてください。 ○人工呼吸器や医療機器からアラーム音などが鳴っている場合は、速やかに介助者に知らせてください。 ○言葉でのコミュニケーションが困難だったりする方もいますが、手足の動き、表情等で自分の意思を表現することも可能ですので、必ず意思確認をしてください。 -------------------------------------------------------------- 15ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  来庁者用の駐車場が玄関から離れているが、重度の障害により長距離の移動は負担となるため、玄関の近くに駐車させてほしい。  対応  庁舎の玄関近くにある空きスペースにカラーコーンを置いて、臨時の駐車場とすることで、駐車場から玄関までの移動距離が短くなるように調整を行った。  申出等  嚥下(えんげ)障害があるため、外食時に通常メニューの食事ができないが、できるだけ家族と同じメニューの食事をしたい。  対応  予約の際に希望の食形態を聞き取り、それに合わせて可能な限り再調理対応し、なるべく元のメニューに近い食形態で提供した。 また、専用のスプーンや食器を持参されたので、洗ってお返しした。  申出等  車椅子がリクライニングタイプのため、スーパーの会計時にレジに並ぶこともレジ横を通ることも難しい。  対応  レジにおいて、会計の順番が来るまでは店員が買物カゴを預かり、順番になった時に声をかけるようにし、それまでは広いところで待てるよう配慮した。  申出等  プール施設を利用したいが、着替え用のスペース(ベッド)がないため利用できない。  対応  着替えるときのプライバシーを保護できるように、人目につかず横になって着替えられるスペースへ案内したり、周囲をつい立で囲った簡易ベッドを用意したりした。 -------------------------------------------------------------- 16ページ  知的障害のある方  知的障害とは、脳の機能障害により、認知能力(理解、判断、思考、記憶、知覚等)が全般的に同世代の人たちと 比較して遅れている状態のことをいいます。知的障害は、出生後比較的に早い時期から特徴が現れることが多いです。 障害の状態はさまざまで、一人で行動できる人、支援者と行動をともにしている人など、個人差があります。  対応・配慮 ○話しをするとき  話しかけるときは、なるべく簡単に、短く、明確な言葉で話してください。  抽象的な表現を避け、具体的な表現をしてください。  ゆっくりとした口調で穏やかに話しかけてください。  言葉で聞くよりも目で見て理解することが得意な方が多いので、絵や写真等を使って説明してもらうと理解しやすいことがあります。  子ども扱いせずに、その方の年齢に応じた対応をしてください。  支援者が一緒にいても、必ず本人の意思を確認してください。  言葉を発したり、行動に移るまでに時間がかかる場合があるので、ペースを尊重してください。  長時間待ったり、順番を守ることが苦手な場合もあるので配慮してください。 -------------------------------------------------------------- 17ページ  合理的配慮の提供事例  申出等  選挙の投票を行う際に、次々と他の投票者が来ると、急かされたような気持ちになってパニックを起こしてしまう。  対応  他の投票者を止めることはできないが、他の投票者が少ないと予想される時間帯を前もってお知らせした。 また、実際に来場したときには、他の投票者に間隔を空けてほしい旨お願いした。  申出等  学習活動の内容や流れを理解することが難しく、何をやるのか、いつ終わるのかが明確に示されていないと、 不安定になってしまい、学習活動への参加が難しくなる。  対応  本人の理解度に合わせて、実物や写真、シンボルや絵などで、活動予定を示した。  申出等  言葉だけでの指示だと、内容を十分に理解できないので混乱してしまうことがある。  対応  身振り手振りやコミュニケーションボードなども用いて内容を伝えるようにした。  申出等  契約時の要望などを自分で説明することが難しいため、同行する支援者から話を聞いてほしいとの申し出があった。  対応  個人情報にも関わることなので通常は本人から聞くことになっているが、必要に応じて支援者から説明を聞き、適宜本人の意思を確認した。 -------------------------------------------------------------- 18ページ  発達障害のある方  発達障害とは、脳機能の発達の偏りによる障害です。目に見えての障害が分かりにくいという特徴があります。  自閉症(スペクトラム)とは、主に「他者との言葉でのコミュニケーションが苦手」「形・色・位置・音等へのこだわりが強い(感覚的に過敏である)」 「次に何をするかわからないと不安になる」等の特徴が幼児期から現れると言われています。人によっては、特徴がすべて当てはまるわけではありません。 また、知的障害を伴う場合と、伴わない場合があります。  注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは、集中力が持続せず別の事柄に注意が向いたり、じっとしていられない、衝動的に行動を起こしてしまうという特徴があります。  学習障害(LD)とは、知的障害ではないものの、読み書き計算のいずれかに対してのみ困難性があります。  これらの障害が少しずつあったり、ひとつだけあったりと、人それぞれです。そのため、その人ごとに合った対応を常に工夫していく必要があります。  対応・配慮 ・自閉症の方  話す言葉は短く、要点をはっきりと伝え、穏やかな態度で話してください。言葉で聞くよりも目で見て理解することが得意な人が多いので、 絵や写真等を使って説明してもらうと理解しやすいことがあります。  集中しすぎる方や、こだわりが強い方には、適度な休憩をとる事や気持ちの切り替えを配慮してください。 ・注意欠陥・多動性障害(ADHD)の方  その人の才能を見つけ、サポートして才能を伸ばすような支援をしてください。  音などの刺激に過敏に反応してしまうので、静かな環境、安全な環境を整えてください。  予定の変更は最小限にして、予測可能で、目的が分かるように支援してください。   -------------------------------------------------------------- 19ページ ・学習障害(LD)の方  得意な能力を生かした活動ができるように支援してください。苦手な行動に対しては、周囲の理解を図るとともに、 できる限り自分の力でできるように、得意な能力を生かした支援の手立てを工夫する。  文章は、マーカーを引いたり、行間を広めたりするなど、工夫し、少しずつ、ゆっくり読んでください。  計算をする場合は、絵や写真を用いながら、ゆっくり丁寧に教えてください。また答えだけでなく、プロセスも教えてください。  合理的配慮の提供事例  申出等  聴覚過敏のため、人の話し声が気になってしまい、仕事が手につかないことがある。  対応  人の行き来が少ない部屋で勤務できるようにするとともに、勤務中に耳栓やイヤーマフの使用を認めることとした。  申出等  一度に多くのことを理解して行動するのが苦手である。  対応  仕事内容を一つずつ簡潔に指示する、複雑な指示内容はメモで示すなど、仕事を行うときの配慮について部署内で個別性に合わせた業務指示を行うこととした。  申出等  資格取得のための講義において、座学での読み書きや筆記テストに困難がある。  対応  タブレットの使用許可など、学校で行われることが想定される合理的配慮に準じた対応を行った。 -------------------------------------------------------------- 20ページ  精神障害のある方  精神障害とは、気分が落ち込んだり、やる気が出なかったり、不眠になったり、聞こえないはずのものが聞こえたり(幻聴)、アルコールや薬などに 依存するなど、心の健康を損なうことで本人が「生きづらさ」、「生活のしづらさ」を感じる状態のことをいいます。  精神障害は、状態が良い時・悪い時と「波」があります。また、目に見えない障害であるので、誤解や偏見で人から理解されにくい側面があります。 周囲の人に理解されないことも「生きづらさ」を助長します。反対に周囲の人の理解があり、関係性が良いと「生きづらさ」は弱くなります。  対応・配慮 ・傾聴と受容  いろいろと根堀り、葉掘り聞くのではなく、本人が伝えたいことに耳を傾けてもらえると助かります。話しを聞いてもらうだけで気持ちが楽になることもあります。 ・偏見・先入観で判断せず、正しい知識を持ってください  精神障害は誤解されることが多く、働けないことを「なまけている」と思われることもあります。元気そうに見えるときもありますが、 症状に波があり、薬の副作用などを抱えていることを理解してください。 ・抑うつ気分のある方  過度な励ましは逆効果になることもあります。話しを聞くだけで楽になることもあります。 ・幻覚や妄想のある方  実際にないものを確信したり、知覚したりすることで強い不安感があります。優しく寄り添い支援してください。 -------------------------------------------------------------- 21ページ ・認知機能障害のある方  誤解や錯覚により失敗してしまうこともあり、自信が持てなくなっています。その方の強みを見つけ、伸ばすことを支援してください。 要領よく話したり、聞くこと、行動することが苦手なこともあります。話しを遮らずに聞いて、ゆっくり待ってあげてください。  合理的配慮の提供事例  申出等  申請書類の記入に長い時間を要するので、市役所へ行ってからその場で記入するのは気が引けてしまう。  対応  外部に持ち出しても問題の生じない内容であったことから、事前に申請書類を送付しておき、市役所に来る時に記入済みのものを持参してもらった。  申出等  主治医が決まっており、外来の診察日が指定されているが、勤務のシフトとなかなか合わず、予定の日に受診できないこともある。  対応  受診の妨げにならない勤務体制を組むようにして、やむを得ない場合は、受診のために休めるようにした。  申出等  周囲の同僚が、障害のある人とどのように接すればよいのか分からず、お互い話しかけづらい職場の雰囲気になってしまった。  対応  本人の希望を踏まえて、障害の内容や必要な配慮などについて職場で説明を行った。 -------------------------------------------------------------- 22ページ  失語症・言語障害のある方  失語症とは、脳卒中や事故により脳損傷、脳炎などで大脳の言語領域(ほとんどの人は左脳)損傷によって、 「聞いて理解すること」、「話すこと」、「読んで理解すること」、「書くこと」が難しくなる状態のことをいいます。 脳の損傷の場所で症状が異なり、症状の重さは人によってさまざまで、一人ひとりの症状が大きく異なります。  言語障害とは、発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするため、話し言葉による コミュニケーションが円滑に進まない状態のことをいいます。  対応・配慮 ・表情がわかるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短い言葉や文章で、分かりやすく話しかけてください。 ・一度でうまく伝わらない時は、繰り返したり、別の言葉に言い換えたり、漢字や絵で書く、写真・実物・ジェスチャーで示すなどをすると理解しやすいです。 ・「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると答えやすいです。  合理的配慮の提供事例  申出等  会員登録の内容を変更したいが、受付が電話のみのため手続きを行うことができない。  対応  受付用ではないが他の業務で使っているFAXがあったので、そちらに新しい登録事項を連絡してもらい変更手続きをした。 -------------------------------------------------------------- 23ぺージ  高次脳機能障害のある方  高次脳機能障害とは、交通事故で頭を強く打ったり、脳梗塞等で脳の血管が詰まり、酸素が十分に行き渡らなかったりすることで、 脳が傷つき、その損傷部位によって特定の症状が現れます。身体の麻痺や視聴覚の障害とは別に、思考・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態のことをいいます。  外見からはわかりにくく、周囲の人が理解することが難しかったり、本人自身も自分の障害を十分に認識できないことがあります。また、一人ひとりの症状も異なります。  対応・配慮 ・日常生活や対人関係、仕事などがうまくいかず、自信を無くし、混乱や不安の中にいることを理解してください。 これまでの生活や人生観などを尊重した関わりを持つようにしてください。 ・ゆっくり、わかりやすく、具体的に話をしてください。情報を伝えるときは、メモや絵、写真などを活用するなどしてください。 ・「手順を簡単にする」「日課をシンプルにする」「手がかりを増やす」などの環境調整をすることが大切です。  合理的配慮の提供事例  申出等  周りの視線が気になってしまい、仕事に集中できないとの申し出があった。  対応  机に視線を遮るためのパーテーションを設置して、仕事に集中できる環境を作った。 ------------------------------ 24ページ  知っておきたい  障害者に関するマーク  障害者のための国際シンボルマーク  すべての障害者が利用できる建築物や施設であることを示す世界共通のマークです。 駐車場などで見かけた場合には、障害者の利用への配慮とご協力をお願いします。  身体障害者標識  身体が不自由なため条件付きで運転免許が認められている方が、 普通自動車を運転するときに自転車の前後につけるマークです。  耳マーク  聞こえが不自由なことを表すマークです。 口元を見せてはっきりと話したり、筆談でやり取りするなどの配慮をお願いします。  聴覚障害者標識  聴覚に障害があるため、ワイドミラーの使用を条件として運転免許が認められている 方が、普通自動車を運転するときに自動車の前後に付けるマークです。  盲人のための国際シンボルマーク  視覚障害者の安全やバリアフリーに考慮された建物、設備、機器などに付けられています。 ------------------------------ 25ページ  ほじょ犬マーク   ほじょ犬は盲導犬・介助犬・聴導犬のことをいいますが、公共施設や交通機関はもちろん、 デパートやスーパー、ホテルやレストランなどの民間施設でも、ほじょ犬が同伴できるようになりました。  「白杖SOSシグナル」普及啓発シンボルマーク  視覚に障害のある人が白杖を頭上50p程度に掲げているのを見かけたときは、進んで声をかけて 支援しようという「白杖SOSシグナル」運動の普及啓発シンボルマークです。駅のホームや路上では、 白杖SOSシグナルがなくても声をかけて、困っている様子ならサポートしてください。  オストメイトマーク  人口膀胱・人工肛門を造設している人(オストメイト)のための設備があることを表しています。 このマークをトイレ付近で見かけた場合は、オストメイトに配慮されたトイレということです。  ハート・プラスマーク  身体内部(心臓、呼吸器、腎臓、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫機能)に障害がある人を表します。 外見からは分かりにくい障害ですが、電車の中などでは優先席に座りたい、近辺での携帯電話使用を 控えてほしいといった希望をしていることがあります。  障害者雇用支援マーク  公益財団法人ソーシャルサービス協会が障害者の在宅障害者就労支援及び障害者就労支援を認めた企業、 団体に対して付与する認証マークです。就労を希望している障害者が障害者雇用を促進したいと思っている 企業がどこにあるのか、少しでも分かりやすくするためのマークです。 ------------------------------ 26ページ  ヘルプマークをご存じですか?  ヘルプマークとは  義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、認知所の方、 または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、 周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるように 作成したマークです。  ヘルプマークを見かけたら、思いやりのある行動をお願いします。  例えば、  〇電車、バスの中では、席をお譲りください。  〇駅等で困っている様子を見かけたら、声をかけるなど配慮をお願いします。  〇災害時は、安全に避難するための支援をお願いします。  相模原市 障害への理解を進める 情報発信サイト さーくる  さーくるでは、冊子では掲載しきれなかった障害の特性・配慮や、障害者団体の活動など掲載していますので、 ぜひご覧ください。 ------------------------------ 裏表紙  障害者差別解消に向けた合理的配慮の事例集  令和4年3月発行  編集・発行  相模原市 健康福祉局 地域包括ケア推進部 高齢・障害者福祉課  〒252−5277 相模原市中央区中央2丁目11番15号  TEL(042)707-7055 FAX(042)759-4395  Eメールアドレス k-s-fukushi@city.sagamihara.kanagawa.jp