広報さがみはら No.1448 令和3年(2021年)1月1日号 8.9面 ---------- サガミハラに進路を取れ 経営者に聞くミライ目線  新年に当たり、相模原に進路を取った企業に、「ビジネスの視点から見た相模原市」についてインタビュー。企業経営者から見た相模原の魅力とは。コロナ禍という逆境で描く未来への展望とは。 しなやかに逞(たくま)しく挑戦を続ける プライムデリカ株式会社(南区麻溝台)代表取締役社長 齊藤正義(さいとう まさよし)さん  大手コンビニエンスストア向けに、惣菜(そうざい)やサラダ、スイーツなどを製造するプライムデリカ株式会社。昭和61年(1986年)に厚木市で創業したが、平成13年(2001年)に本市南区に新社屋・工場を建設し、本社機能を厚木から本市へ移転。現在、北関東から九州まで12の生産拠点を展開している。順風満帆のようだが、課題がなかったわけではない。強さの秘訣(ひけつ)は、目の前の問題を正面から見据え、新たなチャレンジで克服していく逞しさにあった。 十分な供給を叶(かな)えるため相模原へ  1990年代、県内にセブンイレブンの店舗が増えて、厚木工場だけでは受注に応えられなくなり、新工場をつくる計画が動き出しました。  工場では大勢のパートさんが必要です。相模原は人口が多く、人材確保が容易なことは大きな魅力でした。それに、十分な生産設備を展開できる土地があり、すでに圏央道が通ることも分かっていたので、物流面の将来性がありました。これらが決め手になり、相模原への移転を決断しました。その後も事業を拡大し、平成29年(2017年)には、市のSTEP50(さがみはら産業集積促進方策)を活用して、第2工場の操業を開始しました。 働きやすい職場はコミュニケーションと人を大切にする心から  私は平成24年(2012年)に社長に就任しました。ある時、視察に来た取引先から「こんなに挨拶(あいさつ)のない工場はここだけだ」と指摘され、愕然(がくぜん)としました。それ以来、私から率先してパートさんに挨拶するようにしました。これからも継続していきます。  企業の基本は人ですから、従業員を大切にしたいと考えています。全国に工場があるので、転勤などは希望を重視します。また、最近では新型コロナウイルス感染症対策として、通勤用バスや食堂での感染防止策のほか、抵抗力を高めると言われている乳酸菌飲料を毎日全員に配っていて好評です。 雇用をめぐる時代の変化の中で  相模原工場の開設時は、求人を出すとすぐに数百人の応募がありましたが、今は雇用環境が厳しくなり、以前のようには集まりません。そこで、相模原の2工場では多くの外国人を採用しています。外国人技能実習生と語学留学生です。彼らが地域になじめるよう、清掃活動や地域の事業に参加してもらうようにしています。  それから、市の補助金を活用して、ロボットの導入による「人材不足の解消」にも取り組んでいます。今進めているのは、プリン製造の自動化。容器にプリン液を充填(じゅうてん)するところから、さまざまな工程を経て商品として完成するまで、従来15人程度必要だったところを5人で担うことが可能になります。これは、単なる省人化・効率化にとどまらず、商品の品質向上や、新鮮さをより長く保たせる改良などを同時に目指した取り組みです。 これからも挑戦は続く  近頃は甚大な自然災害が多く、野菜の安定供給が課題です。対策として平成30年(2018年)からベジタブルプラント(野菜工場)の運用を始めました。3種類のリーフレタスを栽培していて、1日に250㎏生産していますが、本来の生産能力からするとまだまだ少ないです。  各店舗に運ぶ商品の仕分けシステムの自動化も研究していますが、こちらの完成度はまだ3割ほど。チャレンジはまだ途上です。こうした取り組みは容易に達成できるものではありませんが、他ではできないような、「新しくて良いこと」にチャレンジしていきたいと考えています。 ウレタンのように柔軟に 相模カラーフォーム工業株式会社(中央区上溝)代表取締役 甲斐全吉(かい ぜんきち)さん  昭和45年(1970年)創業、50年を超える歴史を持つ相模カラーフォーム工業株式会社は、主に自動車向けのウレタンフォーム製品を加工・販売してきた。思いがけないことから4代目になった甲斐社長が商品開発を大改革。長年培ってきたウレタンの加工技術を生かして、個人消費者向けにある製品を作ったのだ。今や新型コロナウイルス感染症予防の必需品となったマスク関連の、「ある製品」とは。 ただの取引先から突然社長に  14年前になりますが、私は練馬で建築資材の加工会社に勤めていました。独立を考え始めた矢先、取引先だったこの会社の3代目から「会社を畳もうと思っている」という相談を受け、事業を引き継いで4代目に就任することを決めました。  この相模原は、東名高速や中央道、圏央道といった高速道路がいずれも近く、利便性が高いと感じています。 加工業が生き残るための挑戦  就任後、取り扱い製品を自動車向けから、少しずつもともと扱っていた建築用材料の加工にシフトし、耐久性や不燃性に優れた製品の加工・販売をしながら、オリジナル製品の開発に取り組みました。自社開発は大変でも、加工業がきちんと収益を上げていくために必要と考えたからです。マスクに付けて使用する「くびにかけるくん」(以降、かけるくん)もその一つです。 マスク着用時の耳の痛みを解消するアイデアが受けて大ヒット  インフルエンザ予防や花粉症対策として開発した製品で、市のトライアル発注認定製品にも認定されました。売れ行きは順調でしたが、新型コロナ予防でマスク需要が高まったため、マスコミで紹介され、一気に販売が伸びました。  増加する発注に対応するため、市の支援を受けて生産工程の一部にロボットを導入する予定です。現在、かけるくんのパック詰め作業を障害者施設にお願いしているのですが、ロボットを導入したら、その担当として障害のある人の雇用を考えています。 これからも地域に根付いて  かけるくんの売れ行きは、しばらく好調かもしれません。ですが常に新しい製品を開発していきたいです。若い人にあの会社で働きたいと思ってもらえるような、相模原の人に貢献できるような会社にしていきたいと考えています。 獣医学で世界を変える 動物アレルギー検査株式会社(緑区西橋本)代表取締役社長 増田健一(ますだ けんいち)さん(獣医師、獣医学博士)  イヌ・ネコが持つアレルギーについて、確度の高い検査結果を動物病院に提供し、この分野で日本のトップシェアを占める動物アレルギー検査株式会社。獣医師・獣医学博士でもある増田さんは、感染症の多くが人と動物共通であることに着目し、研究成果をヒトの医学に生かす研究にも力を入れている。現在は、新型コロナウイルス感染症ワクチン開発に注力し、目指すはノーベル賞。相模原から世界へはばたくのか。 幼い頃から獣医を目指す  8歳のとき、飼っていたセキセイインコが弱って死んでいくのを、ただ見ていることしかできませんでした。その時、生と死の境を知り、それをきっかけに獣医師という職業を志しました。 動物病院勤務、理化学研究所(理研)研究員などを経て起業  夢がかなって獣医師になったものの、獣医学が社会に果たす意義を証明したくて転職し、平成19年(2007年)に川崎市で起業。その後すぐに「さがみはら産業創造センター」(緑区西橋本。以降、SIC)に移転し、現在に至ります。移転に当たり、SICでは検査システムの研究が可能だったこと、金融機関などの基本的な都市機能が揃(そろ)っていることを重視しました。当時の橋本には、まだのどかな雰囲気が残っていましたが、この13年のまちの変化は目覚ましいものがありますね。 ペットのアレルギー検査における強みを生かす  トップシェアを維持しているのは、私たちの研究が「科学的に正しい」から。検査結果が正しくて、初めて獣医師は適切な治療ができるのです。  目下の研究の中心は「研究成果をいかにヒトに応用するか」。アレルギーと言うと、スギ花粉やダニを思い浮かべますよね。同じアレルギーがイヌにもある。イヌはサルの次にヒトに近く、アレルギーや感染症はその多くが共通していて、新型コロナもその一つです。 獣医学を生かしてワクチン開発  現在、理研のほか、北里大学や山口大学とそれぞれ共同研究チームを立ち上げ、新型コロナのワクチン研究を進めています。求めるのは「変異しない部分に作用し、重症化を回避」できるワクチンです。開発の難しさはウイルスの変異にあり、研究はまだ途上ですが、獣医学をヒトに、社会に役立てたいと考えています。 市は事業者のチャレンジを応援します! インタビューに登場した支援制度 ※令和3年度の実施内容は今後決定。 1 さがみはら産業集積促進方策(STEP50) 工場などの立地に要した費用の最大40%(限度額10億円)の奨励金を交付  ロボットや航空宇宙を、地域経済をけん引する産業と位置付け、手厚く支援 市内企業が工場建設に要した費用の10%以内(限度額4億円)の奨励金を交付  既存工場のリニューアルなど 工場などの立地時に新たに常用雇用する場合、最大で男性110万円/1人、女性130万円/1人の奨励金を交付  就職氷河期世代の人を常用雇用(正規雇用)した場合にも奨励金を交付 税金を5年間2分の1に軽減  固定資産税、都市計画税を軽減 ※要件など詳しくは、市ホームページをご覧ください。 問い合わせ 産業・雇用政策課 電話042-769-9253 2 市トライアル発注認定制度  優れた新商品の生産をもとに新たな事業分野の開拓を図る中小企業者を認定し、その新商品の販路開拓を支援します。 ※要件など詳しくは、市ホームページをご覧ください。 問い合わせ 産業支援課 電話042-769-8237 新規創業者などを支援 3 さがみはら産業創造センター(Sagamihara Incubation Center=通称SIC)  新規創業、新分野への進出を図る事業者を支援し、新しい産業を創造する拠点。起業準備段階の人を支援する「デスク10」(机1台からのレンタルオフィス)から、本格的な研究開発や設計業務が可能なラボまで備えています。創業から間もない個人やベンチャー企業が入居し活発な活動を展開しています。 所在地 緑区西橋本5―4―21 問い合わせ さがみはら産業創造センター 電話︎042-770-9119 だから選ばれる 企業にも暮らしにも便利!安心! 主要都市への良好なアクセス!  首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が開通して、ますます便利に。リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の橋本駅付近への整備も進んでいます。 相模湖駅から新宿駅 JR中央本線(中央特快)で約55分 橋本駅から新宿駅 京王線(準特急)で約40分 相模大野駅から新宿駅 小田急線(快速急行)で約35分 相模原駅から横浜駅 JR横浜線(快速)で約35分 地震に強い安定した地盤!  深層地盤で震度4程度の地震エネルギーが伝わったとしたとき、地表地盤の揺れが本市のある地域では0.0から0.6と比較的揺れにくくなっています。 液状化の可能性が低い地盤  相模原台地の地盤構成は、大きく分けると表土層、ローム層、礫層です。低層の鉄筋骨工場や鉄筋コンクリート造3階建て程度を支えることができる地盤のローム層が地表から2m程度で現れるため、比較的建築がしやすいのが特徴です。またローム層は液状化の可能性が低いと考えられています。 出典:相模原市「企業立地のご案内」掲載の内閣府防災情報のページ「表層地盤のゆれやすさ全国マップ」を一部改変 ---------- 市シティプロモーションFacebookページ「相模原市シティプロモーション」 @sagamihara.pr https://www.facebook.com/sagamihara.pr 市シティプロモーションTwitter「相模原市シティプロモーション」 @Sagamihara_PR https://twitter.com/Sagamihara_PR