平成29年度「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。
さがみはら生物多様性シンポジウムを開催しました。
平成30年2月25日(日曜日)、相模原市とさがみはら生物多様性ネットワークの共催で「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。3回目となる今年は、「“わたしたちのくらしと生物多様性”~ほんとに知ってる?外来生物のこと~」をテーマとし、専門家による基調講演、市内で活動する団体による事例発表というプログラムで行いました。
基調講演や事例発表でお話しいただいた内容を紹介します。
第1部 基調講演 「外来種とわたしたちのくらし」
国立環境研究所 五箇 公一さん
現在、生物どうしのつながりをあらわす生物多様性が劣化していることが深刻な問題となっています。劣化要因のひとつが外来種の侵入による影響です。外来種とは、「人間の手によって本来の生息地から違う土地へ移動させられた生物種」のことであり、これまで充分な調査をせずに外来種を導入したために、想定を超えて広がったという経緯があります。
外来種が広がることによる影響は深刻です。日本は島国のため各地域に固有種が存在しています。しかし、域外から導入された外来種と在来種が交配し、雑種が産まれ、それが繰り返されると遺伝子汚染が起こります。また、繁殖力の強い外来種が在来種の住処や餌を独り占めし、直接的に在来種が駆逐されてしまいます。その結果、日本中、ひいては地球上どこに行っても同じ生物種だらけになってしまい、遺伝子や景観といった、様々な多様性が失われてしまうのです。現在、生物多様性の劣化を防ぐため、外来種の積極的な防除が行われています。しかし、外来種が悪い存在だから防除するのではなく、防除の究極目的が生物多様性を守るためであることを忘れてはなりません。
その他、目に見えない生物多様性についても考えてほしいと思います。具体的にいえばダニなどをはじめとした寄生生物です。実はジカ熱やデング熱などの新興感染症の広まりにも、生物多様性の劣化が関わっています。もともと新興感染症の病原体は人間が立ち入れない自然の中に生息していました。そして、その自然の中で生きる野生生物と長い歴史の中で宿主、寄生生物の共進化関係を築いていました。しかし、森林伐採などといった人間活動による野生生物の生息地の破壊と、人為的な生物の移動が、共進化の歴史を崩壊させ、その結果、病原体は人間という新たな住処に移り住もうとしているのです。すなわち、外来種問題というのは、在来種だけでなく、我々人間の社会的な安定性に関わる問題なのです。
生物多様性について、目に見える美しい生物だけではなく、ダニなどの目に見えない小さな生物も含めて考えていくことが重要だと思います。
第2部 活動事例発表
相模原市における都市緑化推進事業について
公益財団法人相模原市まちみどり公社 伊東 圭祐さん
「公益財団法人相模原市まちみどり公社」は、平成26年4月に「公益財団法人相模原市都市整備公社」と「公益財団法人相模原市みどりの協会」の合併により発足しました。本日は公社で行っている事業の一部を紹介します。
「花のまちづくり・みどりいっぱい運動」は、市内の緑化推進を目的として、市民団体に花の苗を春と秋の年2回配布し、地域の公園等の花壇に植栽してもらうというものです。平成29年度は281団体を対象に128,000株を配布しました。また、花のまちづくりみどりいっぱい運動に登録している団体が植栽した花壇を対象に、「花のまちづくり花壇コンテスト」を開催しています。
「さがみはらオープンガーデン事業」は、丹精込めて美しく手入れされた個人等のお庭を広く一般に公開していただき、出会いや交流を通じて、花と緑があふれるまちづくりを推進するというものです。バラやクレマチスなどできれいに彩られた庭園が40箇所公開されています。また、歩きながらオープンガーデンを回る「オープンガーデンめぐり」というイベントも実施しています。
「みどりのボランティア育成支援事業」では市民参加型の公園・緑地管理を目指して、「みどりのボランティア」団体を支援しています。現在までに12のボランティアを立ち上げ、支援を行っています。相模原麻溝公園や北公園など、市内の様々な場所で活躍しています。
このほかにも、様々な事業を通じて市民の緑化意識を高め、市民総ぐるみによる都市緑化の推進を図っています。
東林ふれあいの森の保全活動
東林ふれあいの森の保全活動 会長 宇賀地 謙介さん
東林ふれあいの森は、小田急江ノ島線の東林間駅と中央林間駅の間の線路沿いにあります。面積は約2.2ヘクタールで、クヌギやコナラを中心とした雑木林です。この森の歴史を辿ると、明治時代に人々が植林し、その後「薪炭林」として周辺にすむ人たちが木を伐採し、落ち葉を集めるなどして維持されてきました。ところが戦後、薪や炭を使わなくなったことにより、森の手入れがされなくなり、次第に荒れていきました。下草や笹、常緑樹が生い茂る暗い森となり、人の無差別踏み込みにより地面が裸地化してしまいました。さらに、粗大ゴミなどのゴミ捨て場となり、「暗い危険な森」というイメージが着いてしまいました。
このような森の危機をなんとかしようと、市の呼びかけに応じて地元の人たちによるワークショップが開かれました。「自然の生態系を維持する森」として保全を進めること、森の愛称を「東林ふれあいの森」とすることが決まりました。こうした活動をきっかけに、平成13年、森の周辺に住む人たちが「東林ふれあいの森を愛する会」を設立しました。
活動開始から3~4年は大変な作業が続きました。粗大ゴミの撤去から散策路の設置、樹木の除伐、間伐、下草刈りなどの作業を続けた結果、林床まで陽が届く明るい森がよみがえりました。今では、山野草が豊かに芽生えるようになりました。
東林ふれあいの森を愛する会は、市や自治会など様々な関係機関と連携し、幅広い活動を行っています。豊かな自然を守り、次の世代にこの森を残していきたいと考えています。
牧野元気創生会の環境保全活動
牧野元気創生会 会長 志村 孝夫さん
緑区牧野にある、藤野やまなみ温泉の周辺に位置するやまなみ公園でのあじさいの「アナベル」の植樹活動や、「峰山自然公園」の整備、ホタルの保全活動を行っています。
活動の成果としては、藤野やまなみ温泉にいらした観光客の方が、アナベルを見て感動している姿が見られ、観光客の数も年々増えてきていることを実感しています。また、「峰山自然公園」の案内板整備やベンチの設置、景観伐採等をおこなった結果、天気がいいときは富士山が見られるようになるなど、見違えたように景色がよくなりました。さらに、ホタルが100匹ほど見られるエリアでスギやケヤキの伐木やごみ拾い等、河川の整備をおこない、ホタルが住めるような環境の保全に努めています。このエリアは市の条例により水辺環境保全等活動区域に指定されています。
これらの活動には法政大学のボランティアサークルの学生も参加しています。学生が発表にも参加し、「ボランティア活動を続けていく中で感じている課題を解決していきながら、今後は、牧野地区の見どころについて、SNSツールを活用しながら積極的に情報発信していきたいと思っています」と話しました。
質疑応答
講演後の質疑応答では、外来種問題についての話題で盛り上がりました。いきものを飼う時は最後まで面倒をみる覚悟をもつべきであり、かわいそうだからといって、外に放すことは絶対にしてはいけないということをリテラシーとして広めていく必要があります。また、外来種問題を考える際には、地域全体でそこの環境をどうしていきたいかというビジョンを考えることであり、その中で外来種問題についてしっかりと合意形成を図っていくことが必要です。
今回のシンポジウムのテーマである「“わたしたちのくらしと生物多様性”~ほんとに知ってる?外来生物のこと~」にふさわしい内容となりました。平成30年度も同様のシンポジウムを開催する予定です。みなさんの参加をお待ちしています。
過去のいきものコラム
- インタビュー「生物多様性は心を潤し、文化を育む。」 玉川大学教授 田淵俊人さん
- 平成27年度「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。
- 平成28年度「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。
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